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【第4章 女】
(4:141〜4:154)
 

彼らはおまえたちに対して待ち構える者たちで、もしおまえたちにアッラーからの勝利があれば、「われらもおまえたちと共にいたではないか」と言い、もし不信仰者に運が向けば、「われらはおまえたちを圧倒していた。そしてわれらは信仰者からおまえたちを守ってやった」と言う。アッラーは審判の日におまえたちの間を裁定し給う。アッラーは不信仰者には信仰者に対する手立てを与え給わない。(4:141)

『(彼らは)・・・者たち』 前(第139)節の『(彼らは)・・・者たち』の言い替え。

『おまえたちに対して』 運命の転変を。

『待ち構え』 待ち。

『アッラーからの勝利があれば』 勝利と戦利品が。

『われらもおまえたちと共にいたではないか』 宗教において、また、ジハードにおいて。それゆえ、われらに戦利品の分け前をくれ、と。

『言い』 お前たちに向かって。

『もし不信仰者に運が向けば』 おまえたちに対する勝利の。

『われらはおまえたちを圧倒していた』 制圧していた。おまえたちを捕えたり、殺したりすることができたではないか。

『そして・・・と言う』 彼らに。

『われらは・・・(守ってやった)』 われらは・・・(守ってやった)ではないか。

『信仰者からおまえたちを守ってやった』 彼らを見捨て、おまえたちに彼らの情報を送ることによって。それゆえ、お前たちにはわれらの恩がある。

『アッラーは審判の日におまえたちの間を』 (おまえたちと)彼らとの間を。

『裁定し給う』 おまえたちを楽園に入れ、彼らを獄火に入れることによって。

『信仰者に対する手立てを』 根絶の道を。

ある男がアリー・ブン・アブー・ターリブにこれについて、「これはどういうことか。彼らはわれらを殺しているではないか」と尋ねたところ、「審判の日、不信仰者は信仰者に対して手立てがない、ということである」と言ったと言われる。
あるいは、これは現世においてのことで、不信仰者は信仰者に対して論拠において勝つことはできない、ということであるとも言われる。また、これは、不信仰者が信仰者の国を完全に滅ぼし信仰者を根絶やしにすることはできない、という意味である、あるいは、不信仰者は信仰者に対して法において凌ぐ手立てを持たない、なぜなら、聖法は審判の日まで明らかであるから、という意味とも言われる。
この節からフィクフ(イスラーム法)の以下のようないくつかの規定が引き出される。例えば、不信仰者はムスリムの遺産を相続しない、不信仰者はムスリムの財産を強奪してもそれを所有することはできない、不信仰者はムスリム奴隷を買うことはできない、ムスリムは庇護民(の殺害)によって(同害報復刑で)殺されることはない、などである。

まことに偽信者たちはアッラーを欺くが、彼こそ彼らを欺き給う。彼らが礼拝に立つ時には怠惰な様子で立ち、人目を気にし、アッラーをわずかにしか念じない。(4:142)

『まことに偽信者たちはアッラーを欺くが』 表面的には。彼らが内面に隠す不信仰とは裏腹に。それは、(不信仰者に課せられた)現世的な規定から逃れるためであった。

「アッラーを欺く」とあるが、これは「アッラーの使徒を欺く」という意味である。なぜなら、すべてをお見通しのアッラーが欺かれることはないからである。

『彼こそ彼らを欺き給う』 これは前の文に対応した喩えの表現である。アッラーは現世においては預言者に彼らが隠す意図を知らしめることによって彼らを辱め、来世においては懲罰を与え給う。

アッラーは現世においては彼らの命と財産を保証したままに放置する一方で、来世に彼らのために獄火の最も深い場所を用意し給う。あるいは、シラート(火獄の上にかけられた橋)を渡る際に彼らは信仰者と同じように光を与えられるが、信仰者の光は消えずに残るのに、彼らの光は消え、彼らは信仰者に「待ってくれ、おまえたちの光を借りたい」と言うこと(第57章[鉄]13節参照)である、とも言われる。
「偽信者(munāfiq)」とは、トビネズミの「穴(nāfiqā)」から取られたもので、トビネズミはそこに2つ入り口を作り、片方から入り、もう片方から出る。そのように、偽信者は、一方で、信仰者に対しては「われらは信仰者である」と言いながら、もう一方で、不信仰者に対しては「われらは不信仰者である」と言うのである。

『彼らが礼拝に立つ時には』 信仰者と一緒に。

『怠惰な様子で立ち』 億劫そうに。

『人目を気にし』 自分たちの礼拝のことで。

『アッラーをわずかにしか』 人目のためにしか。

『念じない』 礼拝しない。

その間をためらい、あちらの者の方でもなければ、こちらの者の方でもない。アッラーが迷わせ給うた者におまえは道を見出せはしない。(4:143)

『その間を』 不信仰と信仰の。

『ためらい』 行きつ戻りつし。

『あちらの者・・・』 不信仰者。

『・・・の方でもなければ』 ・・・に属すのでもなければ。

『こちらの者』 信仰者。

『道を見出せはしない』 導きへの道を。

信仰する者たちよ、信仰者をさしおいて不信仰者を味方としてはならない。おまえたちはアッラーに自分たちに不利となる明白な口実を提供しようというのか。(4:144)

『自分たちに不利となる明白な口実を』 おまえたちの偽信仰の明らかな証拠を。

『提供しようというのか』 彼らに味方することによって。

まことに偽信者は獄火の最下の底にあり、彼らにおまえは援助者を見出せはしない。(4:145)

『獄火の最下の・・・』 それはその(獄火の)奥底である。

『底』 場所。

楽園に階層があるように、獄火にも階層がある。獄火は7層からなり、最も高い層は不服従の信仰者のためのもので、ジャハンナム(火獄)である。次がキリスト教徒のためのラザー(燃える火)で、その次がユダヤ教徒のためのフタマ(砕く火)、4層目はサビー教徒のためのサイール(燃え上がる炎)、5層目がゾロアスター教徒のためのサカル(地獄の火)、6層目が多神教徒のためのジャヒーム(地獄火)、7層目が偽信者のためのハーウィヤ(奈落)である。

『援助者を』 懲罰を防ぐための。

偽信者は不信仰をあからさまにした不信仰者よりも酷い懲罰を受ける。それは彼らが不信仰だけでなく、アッラーの印に対する嘲笑を併せ持つからである。

ただし、悔い改め、正し、アッラーに縋り、宗教をアッラーに一心に捧げる者たちは別で、それらの者は信仰者と共にある。そして、いずれアッラーは信仰者に大きな報酬を与え給う。(4:146)

『悔い改め』 偽信仰から。

『正し』 自分の行いを。

『アッラーに縋り』 信頼し。

『宗教をアッラーに一心に捧げる』 見栄を捨て。

『それらの者は信仰者と共にある』 彼らに与えられるものにおいて。

『大きな報酬を与え給う』 来世で。それは楽園である。

おまえたちが感謝し、信仰したならば、どうしてアッラーがおまえたちへの懲罰をなし給おうか。アッラーは報いに厚く、全知なる御方であらせられた。(4:147)

『おまえたちが感謝し』 彼の恵みを。

『信仰したならば』 彼を。

『どうしてアッラーがおまえたちへの懲罰をなし給おうか』 否定の意味の疑問文。つまり、彼はおまえたちを懲らしめ給わない。

「おまえたちへの懲罰を(bi-adhābi-kum)」の前置詞「バーゥ(b)」(bi)は「なし給う」にかかる手段を表す「バーゥ」で、「アッラーはおまえたちへの懲罰によってはなにもなし給わない」という否定の意味である。なお、「mā(どうして)」を否定詞の「mā」と捉え、「アッラーはおまえたちに懲罰をなし給わない」と読むことも可能で、その場合の「バーゥ」は虚字のバーゥである。どちらと読んでも意味は同じである。

『アッラーは報いに厚く』 信仰者の行為に対して。報償によって。

アッラーにおける「シュクル(感謝=報いに厚いこと)」とは、比喩的な意味で、しもべのわずかな行いをも嘉し給い、何倍もの報奨によって報い給うことを意味する。一方、しもべにおける「シュクル」とは、アッラーに服すことである。

『全知なる御方であらせられた』 彼の被造物について。

アッラーは被造物のことを隅々まで知り尽くし、判断に間違いが生じることはなく、必ず感謝する者には報奨があり、背く者には罰がある。

アッラーは悪い言葉を大声で言うことを好み給わない。ただし、不正を被る者は別である。アッラーはよく聞き、よく知り給う御方であらせられた。(4:148)

『アッラーは悪い言葉を』 誰かが。

『大声で言うことを好み給わない』 つまり、彼にそのことで懲罰を与え給う。

アッラーは人が隠すことを声を上げて言うこと、たとえば陰口や中傷を好み給わない。理性ある者とは、自分の欠点に専念する者である。大声で言うだけでなく、密かに言っても同じであるが、ここでは特に大声で言うことが取り上げられる。なぜなら、この節の啓示のきっかけは、ある男が人々を客に招いたが、彼らは客としてのマナーに欠け、男が席を外すと大声で語った、という実話であったからである。ただし、その文字通りの意味が問題なのではない。大声で悪口を話すことは密かに話すよりさらに醜悪だからでもある。

この節はアブー・バクル・アル=スィッディークについて下されたとも言われる。ある男が彼を罵った。そこには預言者がおられた。アブー・バクル・アル=スィッディークはずっと黙っていたが、それから男に言い返した。すると、預言者は立ち去られた。そこでアブー・バクルは言った、「アッラーの御使いよ、彼は私を侮辱したが、あなたは何も言われなかった。それから私が言い返すと、立ち上がられた」。すると、彼は、「天使があなたに代わって応答していた。ところが、あなたが彼に言い返すと、天使は去り、シャイターンが来たため、私は立ち去ったのである」と言われ、その時にこの節が下された。

『ただし、不正を被る者は別である』 不正者の不正行為を告げることによる大声と、彼に対して祈ることは咎め給わない。

例えば、「彼は私の財産を奪った」「彼は私を謗った」などと言い、「アッラーよ、彼から私の権利を引き出し給え」などと祈ることは構わない。ただし、彼の破滅などを祈ることは許されない。

『アッラーはよく聞き』 言われることについて。

『よく知り給う御方であらせられた』 行われることについて。

おまえたちが善を公にしようと、それを隠そうと、また、害を許そうと、まことにアッラーは寛容にして全能なる御方であらせられた。(4:149)

『善を』 良い行いを。

『公にしようと』 明らかにしようと。

『それを隠そうと』 それを密かに行おうと。

『害を』 不正を。
条件節には3つのこと、善行を公然と行うこと、善行を隠れて行うこと、そして、受けた不正を許すことが述べられているが、『まことにアッラーは寛容にして全能なる御方であらせられた』は3つ目の『害を許そうと』に対応するもので、前の2つはそれに至る前置きである。

『まことにアッラーは寛容にして全能なる御方であらせられた』は、条件節の省略された帰結節「許せ」の理由を述べたものである。
『まことにアッラーは寛容にして全能なる御方であらせられた』アッラーは不服従を繰り返し許し給う御方である。それに報復することも可能であるにもかかわらず。それゆえ、おまえたちも許せ。
ここでは、不正を被った者に、報復が認められる時に相手を許すことが促されている。

アッラーと彼の使徒たちを拒絶し、アッラーと彼の使徒たちの間を分けようとし、「ある者は信じ、ある者は信じない」と言い、その間に道を得ようとする。(4:150)

『アッラーと彼の使徒たちの間を分けようとし』 彼(アッラー)を信じながら、彼ら(使徒)を信じないことによって。

『ある者は信じ』 使徒のうち。

『ある者は信じない』 彼らの。

『その間に』 不信仰と信仰の。

『道を得ようとする』 そこに向かう道を。
信仰と不信仰の中間に彼らの宗教と宗派を採ろうと欲する。

真実、それらの者、彼らこそ不信仰者である。そして、われらは不信仰者には屈辱の懲罰を用意した。(4:151)

『真実』 『それらの者、彼らこそは不信仰者である』の内容を強調する同属目的語の動名詞。

『屈辱の懲罰を』 辱めの。それは獄火の懲罰である。

アッラーと彼の使徒たちを信じ、彼らの誰をも区別しない者、それらの者にはいずれわれらが彼らの報酬を与える。アッラーはよく赦す慈悲深い御方であらせられた。(4:152)

ハフス&アースィム版:アッラーと彼の使徒たちを信じ、彼らの誰をも区別しない者、それらの者にはいずれ彼が彼らの報酬を与え給う。アッラーはよく赦す慈悲深い御方であらせられた。(4:152)

『彼の使徒たちを信じ』 彼らのすべてを。

『いずれわれらが・・・与える』 一人称複数の接頭辞で「nutī(われらが・・・与える)」と読む読誦法と、三人称単数で「yutī(彼が・・・与え給う)」と読む読誦法がある(監訳者注:ハフス&アースィム版は後者の読誦法を採る)。

『彼らの報酬を』 彼らの行いの報奨を。

『アッラーはよく赦す』 彼(アッラー)の友(awliyā)には。

『慈悲深い御方であらせられた』 彼に服する民には。

啓典の民はおまえに、彼らに天から書を下すよう求める。彼らはかつてムーサーにそれより大それたことを求め、「アッラーをはっきりと見せてくれ」と言い、彼らの不正ゆえに雷が彼らを捕えた。それから彼らは明証が彼らに訪れた後で、子牛を崇拝したが、われらはそれを赦した。そして、われらはムーサーに明白な権威を与えた。(4:153)

『啓典の民は』 ユダヤ教徒は。

『おまえに』 ムハンマドよ。

『彼らに天から啓典を下すよう求める』 一度に。ムーサーに下されたように。困らせるためである。もし、おまえがそれを大変だと思うなら(彼らはムーサーにさらに大それたことを求めたことを思い起こせ)。

『彼らは』 つまり、彼らの父祖は。

『かつてムーサーにそれより大それたことを求め』 それより重大なことを。

『はっきりと見せてくれ』 この目で。

『彼らの不正ゆえに』 要求で困らせようとしたことで。

『雷が彼らを捕えた』 死が。彼らへの懲罰として。

『明証が』 アッラーの唯一性を証しする様々な奇跡が。

『子牛を崇拝したが』 神として。

『われらはそれを赦した』 そして、彼らを根絶しなかった。

『われらはムーサーに明白な権威を与えた』 悔悟のために彼らの仲間を処刑することを彼らに命じた時に、彼らに対する明瞭な権威を与えた。そこで、彼らはそれに従った(そして、1日で7万人を処刑した)。

そして彼らとの契約にあたりわれらは山を彼らの上に持ち上げ、「門を跪拝しながら入れ」と彼らに言った。また、われらは、「安息日に破戒してはならない」と彼らに言い、堅い約束を彼らから取り付けた。(4:154)

『彼らとの契約にあたり』 彼らから約束を取り付けるため、彼らを怖がらせるために。それで彼らはそれを受け入れた。

彼らは律法の戒律を受け入れることに抵抗した。そこでアッラーは彼らの上に山を上げ、それで彼らはそれを受け入れたのである。

『山を』 峰を。

『彼らの上に持ち上げ』 それ(山)は彼らの上に陰をなし。

『門を』 町の門を。

『跪拝しながら入れ』 身を屈めた拝礼(スジュード)である。

頭を低く下げた謙虚の拝礼である。だが、彼らはそれに背き、尻で練り歩いて入った。

『安息日に』 漁をすることによって。

『破戒してはならない』 別の読誦法では、第1語根の「アイン()」を母音「a」で、第2語根の「ダール(d)」を促音で「taaddū」と読むが、それは元の動詞派生形第8形の挿入辞の「ターゥ(t)」が「ダール(d)」に吸収・同化したものである。つまり、「ta tadū」(意味は同じ)。

『堅い約束を彼らから取り付けた』 そのことで。ところが、彼らはそれを破った。


転載:「ジャラーラインのクルアーン注釈」
中田香織 訳
中田 考 監訳
日本サウディアラビア協会出版



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2006年 アラブ イスラーム学院