「われらはキリスト教徒である」と言う者たち、われらは彼らと誓約を結んだ。だが、彼らは訓戒されたものの一部を忘れた。そこで、われらは彼らの間に審判の日まで敵意と憎悪を貼り付けた。そして、いずれアッラーは彼らがなしたことを彼らに告げ給うであろう。(5:14)
『「われらはキリスト教徒である」と言う者たち』
次の『われらは彼らと誓約を結んだ』につながる。
「キリスト教徒たち(nasārā)」という言い方がされていないのは、アッラーが彼らをそう名付け給うたのではなく、彼らが勝手にそう自称するだけのことだからである。
『われらは彼らと誓約を結んだ』
ちょうどわれらがイスラーイールの子孫のユダヤ教徒と結んだように。
『彼らは訓戒されたものの一部を忘れた』
福音書の中の。信仰その他に関することで。そして約束を破った。
『われらは・・・貼り付けた』
引き起こした。
『彼らの間に審判の日まで敵意と憎悪を』
分裂と憶測の不一致によって。それでそれぞれの分派が他の派を不信仰者とみなした。
『彼らの間に』とは、キリスト教徒の間に、とも、キリスト教徒、ユダヤ教徒の間に、とも、キリスト教徒とユダヤ教徒の間に、とも考えられる。
『いずれアッラーは』
来世で。
『彼らがなしたことを彼らに告げ給うであろう』
そして、彼らにその報いを与え給う。
啓典の民よ、おまえたちにはわれらの使徒が訪れ、おまえたちが啓典から隠したものの多くをおまえたちに明かし、多くについては免じた。おまえたちにはアッラーから光と明白な啓典が確かに届いたのである。(5:15)
『啓典の民よ』
ユダヤ教徒とキリスト教徒よ。
『われらの使徒が』
ムハンマドが。
『啓典から』
律法の書と福音書から。
『隠したものの多くを』
隠蔽したものの。「石打(姦通者への)の節」や彼の記述など。
『多くについては免じた』
そのうちの。それは解明しなかった。なぜなら、そこにはおまえたちにとって益はなく、おまえたちの恥となるばかりだからである。
『アッラーから光と』
預言者の光である。
『明白な』
はっきりと明らかな。
『啓典が』
クルアーンが。
それによってアッラーは彼の御満悦を追い求めた者を平安の道に導き、彼の御許しによって彼らを諸々の暗闇から光に連れ出し、真っすぐな道に導き給う。(5:16)
『それによって』
その啓典によって。
『彼の御満悦を追い求めた』
彼を信じることによって。
『平安の道に』
安全な道に。
懲罰から安全な道、あるいは、アッラーが人々に定め給うたアッラーの聖法のことである。
『彼の御許しによって』
彼の御意志によって。
『諸々の暗闇から』
不信仰の。
『光に』
信仰に。
『真っすぐな道に』
イスラームの宗教に。
『真っすぐな道』とは、アッラーに至る最短の道である。
「アッラーとはかのマスィーフ、マリヤムの子である」と言う者たちは信仰を拒絶したのである。言え、「アッラーに対して誰になにができよう。もし彼がマスィーフ、マルヤムの子とその母と地上のすべての者を滅ぼそうと欲し給うたなら」。アッラーにこそ天と地とその間のものの主権は属し、彼は御望みのものを創り給う。アッラーはすべてのものの上に全能なる御方。(5:17)
『「アッラーとはかのマスィーフ、マリヤムの子である」と言う者たちは信仰を拒絶したのである』
彼らが彼(マスィーフ)を神とした時に。
これはキリスト教徒のヤコブ派のことである。
『アッラーに対して誰になにができよう』
アッラーの懲罰を防ぐことが。
『もし彼がマスィーフ、マルヤムの子とその母と地上のすべての者を滅ぼそうと欲し給うたなら』
誰にもそれ(防ぐこと)はできない。もしマスィーフが神であればそうすることはできるであろうに。
『アッラーはすべてのものの上に全能なる御方』
彼が御望みになった(すべてのものの上に)。
ユダヤ教徒とキリスト教徒は言った、「われらはアッラーの子であり、彼が愛する者である」。言え、「では、どうして彼はおまえたちをおまえたちの罪ゆえに懲罰を与え給うのか」。いや、おまえたちは彼が創り給うた者のうちの人間である。彼は御望みの者を赦し、御望みの者を罰し給う。アッラーにこそ天と地とその間のものの主権は属し、彼にこそ行き着く先はある。(5:18)
『ユダヤ教徒とキリスト教徒は言った』
それぞれが。
『われらはアッラーの子であり』
近さ、立場において、彼の息子のようである。また、彼は慈悲深さと愛情において父親のようである。
『言え』
ムハンマドよ。彼らに対して(言え)。
『どうして彼はおまえたちをおまえたちの罪ゆえに懲罰を与え給うのか』
もしそのことでおまえたちが正しいならば。父親は息子に懲罰を与えないし、愛する者も彼の愛する者に(そのようなことは)しない。だが、彼はかつておまえたちに懲罰を下し給うた。ということは、おまえたちは嘘をついているのである。
『彼が創り給うた者のうちの』
彼が創り給うた人間の集団に属する。
『人間である』
彼らのためになるものはおまえたちのためになり、彼らに不利なものはおまえたちにも不利である。
『彼は御望みの者を赦し』
赦しを(望み給うた者を)。
『御望みの者を罰し給う』
懲罰を(望み給うた者を)。それに反対することはできない。
『彼にこそ行き着く先はある』
戻るところ。
イブン・アッバースによると、預言者がユダヤ教徒の一団をイスラームに呼び招き、アッラーの応報の恐ろしさを訴えた。すると、彼らは、「どうしてわれらが彼を恐れることがあろうか。われらはアッラーの子であり、愛する者である」と言った。また、キリスト教徒は、福音書の中でマスィーフが彼らに、「私は私の父であり、あなたがたの父である方の許に行く」と言ったという記述を読み、アッラーは慈愛においてわれらの父のようなものであり、われらは彼にとって子のような存在である、と考えたと言われる。
啓典の民よ、おまえたちには、使徒たちの間隔の後、おまえたちに解明するためにわれらの使徒が訪れた。おまえたちが、「われらには吉報伝達者も警告者も来なかった」と言うためである。確かにおまえたちには吉報伝達者と警告者が訪れた。アッラーはすべてに対して全能なる御方。(5:19)
『使徒たちの間隔の後』
中断の後。彼(ムハンマド)とイーサーの間には使徒はいなかった。その間隔は560年であった。
ムハンマドとイーサーを隔てる年月については異論があり、560年とも、540年とも、600年とも、569年とも、430年あまりとも言われる。なお、ムーサーとイーサーの間には1700年の年月がある。
『おまえたちに解明するために』
宗教の諸規範を。
『われらの使徒が』
ムハンマドが。
『おまえたちが・・・言うためである』
『・・・ためである(’an)』は、「’an」の後に否定詞「lā」(を補う。つまり、「おまえたちが・・・と言わないためである」)。おまえたちが懲罰を受けた時に。
『われらには吉報伝達者も警告者も来なかった』
『吉報伝達者も(min bashīrin)』の「min」は虚字。
『確かにおまえたちには吉報伝達者と警告者が訪れた』
それゆえその時、おまえたちには弁解の余地はない。
『アッラーはすべてに対して全能なる御方』
その(全能の)うちには、おまえたちが彼に従わない時に懲罰を与え給うことも含まれる。
また、ムーサーが彼の民に言った時のこと。「わが民よ、アッラーのおまえたちへの御恵みを思い起こせ。彼はおまえたちの中に預言者をなし、おまえたちを王とし、世界の誰にも授けたことのなかったものをおまえたちに授けた」。(5:20)
『また、ムーサーが彼の民に言った時のこと』
思い起こせ。
『おまえたちの中に預言者をなし』
おまえたちの中から。
『王とし』
召使と下僕の所有者とし。
彼らは召使の最初の所有者となった。彼ら以前には召使を持つ者はいなかった。アブー・サイード・アル=フドゥリーによると、預言者は言われた、「イスラーイールの子孫は誰でも1人の召使と1人の妻と1頭の家畜を所有する者は王と書き留められた」。アル=スッディーによれば、これは、おまえたちを奴隷としたコプト人の手から自由の身となり、自分のことを自由に支配することができるようになったということである。
『世界の誰にも授けたことのなかったものをおまえたちに授けた』
マンナやサルワーなど。また、海を分かつことなど。
「わが民よ、アッラーがおまえたちに書き定め給うた聖なる地に入れ。踵を返して戻り、損失者となってはならない」。(5:21)
『アッラーがおまえたちに書き定め給うた』
おまえたちに入るよう命じ給うた。
『聖なる地』
清められた。シリアである。
シルク(多神教)から清められた地で、シリアのことである。アル=カルビーによると、イブラーヒームがレバノン山に登ると、「見よ。おまえの目が届くところは聖なる地であり、おまえの子孫への遺産である」と言われた。
『踵を返して戻り』
敵を恐れて、逃げ。
『損失者となってはならない』
おまえたちの努力において。
巨人の知らせを聞いた彼らは、泣き、「エジプトで死にたかった。エジプトにわれらを連れ帰る指導者を立てようではないか」と言った。
彼らは言った、「ムーサーよ、まことにそこには巨大な民がいる。彼らがそこから出るまでわれらは入らない。彼らがそこから出れば、われらは入る者となろう」。(5:22)
『まことにそこには巨大な民がいる』
アード族の生き残りで、背が高く強かった。
『われらは入る者となろう』
そこに。
恐れる二人 —アッラーは二人に御恵みを与え給うた— が言った、「門から入って彼らに向かえ。おまえたちが一旦入れば、おまえたちは勝利者となろう。もしおまえたちが信仰者であれば、アッラーにこそ一任せよ」。(5:23)
『恐れる二人』
アッラーの命令を恐れる。2人とは、巨人の状況を探るためにムーサーが送った代表のうちユーシュアとカーリブであった。
『アッラーは二人に御恵みを与え給うた』
無謬性(の付与)によって。それで彼らが目にした彼ら(巨人)の様子をムーサー以外には隠した。それに対し、他の代表たちはそれを言い広め、怖気づいた。
『・・・が言った』
彼ら(彼の民たち)に。
『門から入って彼らに向かえ』
町の門から。彼らを恐れるな。なぜなら、彼らは心(力)のない図体だけだからである。
『おまえたちが一旦入れば、おまえたちは勝利者となろう』
2人はアッラーの援助と彼の約束の成就を確信し、そう言った。