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【第7章 高壁】
(7:120〜7:137)
 

魔術師たちは身を投げて、跪拝し、(7:120)

言った、「われらは諸世界の主を信じた」。(7:121)

「ムーサーとハールーンの主を」。(7:122)

『魔術師たちは身を投げて、跪拝し、言った、「われらは諸世界の主を信じた。ムーサーとハールーンの主を」』 なぜなら、彼らは、彼らの目にしたムーサーの杖の技は魔法ではないことを知ったからである。

フィルアウンは言った、「おまえたちは私がおまえたちに許可する前に彼を信仰するのか。まことにこれは、おまえたちがこの町でその民をそこから追い出そうとするために企んだ策謀に違いない。だが、おまえたちはいずれ知るであろう」。(7:123)

『許可する前に』 私が。

『彼を』 ムーサーを。

『信仰するのか』 『信仰するのか(’āmantum)』は、(元は「aamantum」と)2つの「ハムザ()」だったものが、2つ目が長母音記号の「アリフ」に転じたものである。

『これは』 おまえたちのなしたことは。

『おまえたちはいずれ知るであろう』 私からおまえたちに与えられるものを。

「私はおまえたちの手と足を互い違いに切り落とし、それからおまえたちを全員磔にするであろう」。(7:124)

『互い違いに』 全員のそれぞれ右手と左足を。

彼らは言った、「まことにわれらはわれらの主の許に戻される者である」。(7:125)

『われらの主の許に』 いずれにせよ、われらが死んだ後。

『戻される者である』 来世で帰る者である。

おまえがわれらを殺そうと殺すまいと同じことである。それゆえ、おまえの脅しなど気にはならない。われらはわれらの主の慈悲に行き着くのである。

「あなたは、われらが主の印が訪れた時に信じたというだけでわれらに報復するのか。われらの主よ、われらに忍耐を注ぎ、われらをムスリムとして召し上げ給え」。(7:126)

『報復するのか』 非難するのか。

『忍耐を注ぎ』 彼(フィルアウン)がわれらに対してすると脅したことをなす際に、われらが不信仰者に戻らないよう。

フィルアウンの民の長老たちは言った、「ムーサーと彼の民が地で害悪をなし、彼があなたとあなたの神々を捨てるのを放っておくのか」。彼は言った、「われらは彼らの男児を殺し、女児を生かしておこう。まことにわれらは彼らの上に支配する者である」。(7:127)

『フィルアウンの民の長老たちは言った』 彼(フィルアウン)に。

『ムーサーと彼の民が地で害悪をなし』 あなたへの反逆の呼びかけによって。

『彼があなたとあなたの神々を捨てるのを放っておくのか』 フィルアウンは民のために小さな像を作り、彼らはそれに仕えていた。そして、フィルアウンは、「私はおまえたちの主であり、それらの(偶像の)主である」と言った。それで彼は、「私はおまえたちの至高の主である」と言ったのである。

『放っておくのか』 放置するのか。

『彼らの男児を』 男の新生児を。

『殺し』 第2語根を促音で読む読誦法(「nuqattilu」)と促音なしに読む読誦法(「naqtulu」)がある(前者は強意)。

『女児を生かしておこう』 残しておこう。かつてもそうしたように。

『支配する者である』 能力を持つ者である。そして彼らはイスラーイールの子孫に対してそのようにし、イスラーイールの子孫は(ムーサーに)苦痛を訴えた。

ムーサーは彼の民に言った、「アッラーに助けを求め、忍耐せよ。まことに大地はアッラーのものであり、御望みのしもべにそれを継がせ給う。結末は畏れ身を守る者のためにある」。(7:128)

『アッラーに助けを求め、忍耐せよ』 彼らの迫害に対し。

『継がせ給う』 与え給う。

『結末は』 祝福された(結末は)。

『畏れ身を守る者のためにある』 アッラーを畏れ身を守る者の。

彼らは言った、「おまえがわれらの許に来る前も来た後もわれらは迫害を被った」。彼は言った、「おそらく、おまえたちの主はおまえたちの敵を滅ぼし、おまえたちに地を継がせ、おまえたちがどのように行うかを見給うのであろう」。(7:129)

『おまえがわれらの許に来る前も』 使信を持って(来る前も)。

『おまえたちがどのように行うのかを』 そこにおいて。

良いことと悪いことを行うのを。

われらはフィルアウンの一族を凶年と収穫の減少で捕らえた。きっと彼らも訓戒を受け入れるであろうと。(7:130)

『凶年と』 旱魃の年と。

『きっと彼らも訓戒を受け入れるであろうと』 訓戒を受け入れ、信じるであろうと。

だが、良いことが訪れると彼らは、「これはわれらのもの」と言い、悪いことが彼らに降りかかると、彼らはムーサーと彼と共にいる者たちのせいにする。彼らの運命はアッラーの御許にのみあるのではないか。だが、彼らの多くは知らない。(7:131)

『良いことが訪れると』 豊作や富裕が。

『彼らは、「これはわれらのもの」と言い』 われらはそれに相応しい、と言って感謝せず。

『悪いことが彼らに降りかかると』 旱魃や災難が。

『彼らはムーサーと彼と共にいる者たちのせいにする』 ムーサーと彼と共にいる信仰者を元凶とみなす。

『彼らの運命は』 彼らの悪運は。

『アッラーの御許にのみあるのではないか』 アッラーがそれを彼らにもたらし給う。

『彼らの多くは知らない』 彼らに起きることは、アッラーの御許からのものであることを。

そして彼らは言った、「おまえがわれらを魔法にかけようとしてどんな印をわれらにもたらそうとも、われらはおまえを信じはしない」。(7:132)

『彼らは言った』 ムーサーに。

『われらはおまえを信じはしない』 そこでムーサーは彼らに災いを祈った(次節脚注参照)。

そこでわれらは彼らに洪水、イナゴ、ダニ、カエル、そして血を詳細な印として送ったが、彼らは高慢な態度を取った。彼らは罪深い民であったのである。(7:133)

『洪水』 水が彼らの家に入り込み、 7日間、座った者の喉の高さに達した。

水はエジプト人の家の中に入ったが、それと隣接したイスラーイールの民の家には入らなかった。

『イナゴ』 イナゴは彼らの穀物も果実も食べた。同じく(7日間続いた)。

『ダニ』 『ダニ(クンマル)』虫、またはダニの一種であり、イナゴが食べ残したものを追い求めた。

『カエル』 彼らの家と食べ物に満ちた。

『そして血』 彼らの水の中に。

『詳細な印として』 明白な印として。

それらはそれぞれ 7日間土曜から土曜まで彼らの許に留まった。また、2つの印の間にはそれぞれ1ヵ月の間があった。

『彼らは高慢な態度を取った』 それを信じることに対して。

サイード・ブン・ジュバイルによると、魔術師は信仰したが、フィルアウンが打ち負かされて戻っても、彼と彼の民は拒絶し、ただ不信仰に留まり、悪に固執するばかりであった。そこでアッラーは彼らに次々と印を見せ給うた。まず、アッラーは彼らを数年の飢饉、つまり旱魃と不作で襲い給うた。これに先立って彼らには手と杖の奇跡を見せ給うていたが、彼らは信じなかった。そこでムーサーは祈って言った、「主よ。あなたのしもべフィルアウンは地上で高ぶり、人を抑圧し、高慢であった。もし、彼の民が約束を破ったなら、彼らを懲罰で捕え、それを彼らへの報復となし、また、私の民と彼らの後の者への訓戒と印と教訓となし給え」。そこでアッラーは彼らに洪水を送り給うた。水である。アッラーは彼らに空から雨を降らし給うた。イスラーイールの民の家々とコプトの家々は混ざり合っていたが、コプトの家に水が満ち、立てば鎖骨まで水の中に入り、座れば沈んでしまうほどとなった。だが、その水はイスラーイールの民の家には少しも入らなかった。水は彼らの地に留まり、彼らは耕すことも働くこともできなかった。水は土曜から土曜まで 7日間続いた。ついに人は太陽も月も見えず、家から出ることもできなかった。それで彼らはフィルアウンに叫び、彼に助けを求めた。そこで彼はムーサーに使いを送り、言った、「われらから懲罰を取り除いてくれ。一つの海となってしまった。もしおまえがこの懲罰をわれらから取り除いたら、われらはおまえを信じよう」。そこで至高なるアッラーは雨を止め、風を送り給うた。すると大地は乾き、かつて見たこともなかったような草が生えてきた。すると彼らは言った、「われらが悲しんでいたものはわれらにとって良いものであった。だが、われらはそれに気づかなかったのだ。いや、アッラーに誓って、われらはおまえを信じないし、おまえと共にイスラーイールの子孫を行かせない」。(・・・)

それから無事に1ヵ月が過ぎた。それからアッラーは彼らにイナゴを送り給うた。イナゴは草木も果実も木の葉も食べ、扉まで食べるありさまであった。イナゴは飢えて、満たされなかった。イスラーイールの子孫はこの害を少しも受けなかった。事は深刻となり、イナゴが飛んでいると太陽を隠すほどとなり、地上に1ズィラーウ(腕尺)ほど折り重なった。人々はそのことで騒ぎ立て、言った、「ムーサーよ、おまえの主に祈ってくれ。もしおまえがわれらから懲罰を取り除けばわれらはおまえを信じよう」。そして彼らは彼にアッラーとの約束と誓約を与えた。そこでムーサーは祈り、アッラーはイナゴが土曜から土曜まで7日間彼らの許に留まったのち、それを彼らから取り除き給うた。(・・・)

彼らの穀物と収穫には残ったものがあった。そこで彼らは、「われらに充分なものはわれらに残った。それゆえわれらはわれらの宗教を捨てはしない。信じはしない」と言った。それから彼らは平穏に1ヵ月を過ごし、元の醜行に戻った。そこでアッラーは彼らに「クンマル」を送り給うた。「クンマル」がなにかについては見解が分かれる。・・・クンマルはイナゴが残したものを食べ、大地を貪り食った。服と皮膚の間に入り、血を吸った。誰かが食べ物を食べているとクンマルで一杯になった。臼に10の皮袋を持って出ると、戻る時にはわずかしか残らなかった。・・・彼らは眠りと安息を妨げられ、彼らとフィルアウンはムーサーに叫んで言った、「われらは悔い改める。それゆえおまえの主に、この災いを取り除いてくれるよう祈ってくれ」。そこでムーサーは祈り、アッラーはクンマルを土曜から土曜まで7日間彼らの許に留めた後、それを取り除き給うた。すると、彼らは約束を破り、最も醜悪な行いに戻った。彼らは、「今日こそわれらは彼が魔術師であることを確信した。彼は砂を虫に変えたのだ」と言って信じなかった。そこで、彼らが1ヵ月無事に過ごした後、ムーサーは祈り、アッラーは彼らにカエルを送り給うた。そこでカエルが彼らの家々、食べ物、容器に満ち、服にも食べ物にも飲み物にも必ずカエルを見つけた。人は膝までカエルにうずもれて座り、話そうとすると、カエルが口に飛び込んだ。また、カエルは瓶の中に飛び込んで、食べ物を駄目にしたり、明かりを消したりした。誰かが横になると、カエルがその上に乗り、山のようになり、寝返りも打てないほどであった。食べ物に向かって口を開けば、食べ物よりも先にカエルが飛び込んだ。粉を捏ねても、瓶を開けても、カエルで一杯になった。(・・・)

被害があまりに酷いため、彼らはムーサーに苦情を訴えた。彼らは言った、「今度ばかりは慈悲を。われらには心からの悔い改めしか残っていない。2度と繰り返さない」。そこでムーサーは約束と誓約を取り付け、主に祈った。そこで彼は、カエルが土曜から土曜まで7日間留まったのち、カエルを殺し、雨を降らし、風を送り、それを海に運ぶことによって彼らから取り除き給うた。ところが、彼らは約束を破り、信仰せず、不信仰と醜行に戻った。そこで彼らが1ヵ月を無事に過ごした後、ムーサーは祈り、アッラーは彼らに血を送り給うた。彼らの水はすべて血となったのである。井戸からも川からも飲もうとすると鮮血を見つけるばかりであった。彼らはフィルアウンに苦情を訴えて言った、「飲むものがない」。そこでフィルアウンは言った、「ムーサーがおまえたちに魔法をかけたのだ」。彼らは言った、「どこから彼はわれらに魔法をかけたのだ。つぼの中には水はなく、鮮血しか見つからない」。フィルアウン(アッラーが彼を呪い給いますように)はコプト(エジプト人)とイスラーイールの民を一つの容器に集めた。コプトが触れるものは血となり、イスラーイールの者が触れるものは水となった。ついに喉の渇きに苦しむ中で、フィルアウンの一族の女がイスラーイールの女のところに行き、彼女に言った、「おまえの水から私に水をくれ」。そこで彼女が彼女の皮袋から彼女に水を注ぐと、それは器の中で血となった。とうとうコプトの女はイスラーイールの女に言った、「おまえの口に水を含み、私の口にそれを吐き出してくれ」。そこで彼女は口に水を含み、それを彼女の口に吐き出すと、それは血となった。喉の渇きに圧倒されたフィルアウンは湿った木々を噛むことさえ余儀なくされたが、それを噛むとその水は血となった。そのような状態で7日が過ぎ、彼らが飲むものは血しかなかった。そこで、彼らはムーサーのところに来て、彼らの直面していることの苦痛を訴え、言った、「われらのためにおまえの主に、この卑しめをわれらから取り除くよう祈ってくれ。そうすればわれらはおまえを信じ、おまえと共にイスラーイールの民を行かせよう」。そこでムーサーは主に祈り、彼はそれを彼らから取り除き給うた。

彼らに天罰が下る度、彼らは言った、「ムーサーよ、おまえの主に、彼がおまえと約束し給うたものによってわれらのために祈ってくれ。もしもおまえがわれらから災厄を取り除いたなら、きっとわれらはおまえを信じ、おまえと共にイスラーイールの子孫を行かせるであろう」。(7:134)

『彼らに天罰が下る度』 懲罰が。

『彼がおまえと約束し給うたものによって』 もしわれらが信仰すれば、われらから懲罰を取り除き給うという(約束によって)。

『もしも』 『もしも(la-in)』の「ラーム(l)」は誓いの「ラーム」である。

「アッラーに誓って、もしも」の意味。

だが、一定の時まで、われらが彼らから天罰を解除する度に、途端に彼らは破棄するのであった。(7:135)

『一定の時まで』 つまり、彼らに猶予された時間。それは彼らが海で溺死させられる時である。

『われらが彼らから天罰を解除する度に』 ムーサーの祈りによって。

『途端に彼らは破棄するのであった』 約束を破り、不信仰に執拗に留まるのであった。

そこで、われらは彼らに報復し、彼らを海で溺れさせた。彼らがわれらの印を嘘だと否定し、それを無視する者であったためである。(7:136)

『海で』 塩の海で。

『それを無視した』 それについて考えなかった。

『・・・ためである』 ・・・が原因である。

われらは弱いとみなされていた民にわれらが祝福した地の東と西を継がせた。そしてイスラーイールの子孫の上に彼らが忍耐したがゆえにおまえの主の良い言葉は成就した。そしてフィルアウンと彼の民が作っていたもの、建てていたものを破壊した。(7:137)

『われらは弱いとみなされていた民』 奴隷化されることによって。イスラーイールの子孫のことである。

『われらが祝福した・・・』 水と木によって。『地』を形容するものである。その地とは、シリア地方のことである。

『彼らが忍耐した』 彼らの敵からの迫害に。

『おまえの主の良い言葉は成就した』 その言葉とは、『われらは弱いとみなされていた者たちに恵みを下し、彼らを指導者とし、彼らを相続者となすことを望む』(第28章[物語]5節)である。

『フィルアウンと彼の民が作っていたもの』 建物。

『建てていたものを』 高く建てていた建物を。『建てて・・・』は、第2語根「ラーゥ(r)」の母音を「i」で「 yarishūna」と読む読誦法と、母音「u」で「yarushūna」と読む読誦法がある(意味は同じ)。

『破壊した』 滅ぼした。


転載:「ジャラーラインのクルアーン注釈」
中田香織 訳
中田 考 監訳
日本サウディアラビア協会出版



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2006年 アラブ イスラーム学院