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東大生30名が学院長と「イスラームと教育」について会談


2003年5月14日午後7時、東京大学文科三類2年の大久保遼氏ほか、30名のゼミ生が当学院を訪問、見学。イブラヒーム学院長と面談を行った。


学院長との間で行われた質疑応答

 今回の訪問では、特に「イスラームと教育」という具体的なテーマについて、質疑応答がなされ、以下の通り、活発な論議が展開された。

Q:イスラームの教えの中で、教育はどのような位置を占めていますか?

A:教育は、イスラームの中で最も重要なことの一つで、人間にとり不可欠とされています。アラビア語では、タルビヤ(tarbiyah)といい、増加、成長を意味する語源(注:この単語の語根は「r-b-w」。語根についてはアラビア語カフェをご覧ください。⇒http://www.aii-t.org/j/maqha/study/shikumi/ishtiqaq.htm)からできています。教育の定義とは、全ての個人を精神的、肉体的、社会的、道徳的に完成させる手段であり、これは生涯にわたり持続し、また死後の世界に至るまで人間を完全なものとします。

 人間は生誕以前に男女に分かれ、誕生すると、父母は幼児に良い名前を選択して家庭で養育していきます。特に母親は2年間以上の授乳を行い、子供を慈しみ育てます。イスラームでは母の愛情がより深いことについて触れています。
 
 子供を大切にする必要性は、聖預言者ムハンマドの振る舞い(スンナ)に
多く見ることができます。預言者が子供達と共に遊び、笑い合ったこと、大切な礼拝中に子供がまとい付いてきた時、しばしその動作を止めたこと、10人の子持ちのベドウインに対して彼らを大切にするよう忠告したなど、が伝えられています。 

 また、“正しい家庭から正しい社会が生れる”という考え方がイスラーム社会の基本です。西欧や日本でも見られる「鍵っ子」は、家庭教育の面から問題があるのではないでしょうか。

Q:イスラームでは、日常生活の過ごし方が重要であると聞きますが、日常の広範囲の中での教育はどのように行っていますか?

A:それらは大きく分けて、家庭、学校、モスク、情報と4つあります。個人の完成のためには、知識の修得が必要となりますが、これらは複合的なものです。道徳教育などは、家庭で教えることと、学校での教育に矛盾があってはいけません。例えば、喫煙が悪いと学校で教えても、家庭で父母が喫煙していてはだめです。また、その反対の場合もあるでしょうが、いずれにせよ双方の一致が大事です。
 
 イスラームでは毎日5回の礼拝が定められており、これは精神の糧となり、肉体のためにも良いことです。また、父母を尊敬することは、家庭を大事にすることにつながります。また近隣との付き合いを良くすることや、公衆道徳への配慮として、道路に落ちている小石を人のために取り除くことも、神の報酬がある行為とされています。

Q:在日アラブ人は、日本において様々な困難に遭遇していると思いますが、そうした中でこの学院は教育面でどのような支援を行っていますか?

A:ムスリム達が毎日の生活をスムーズに送れるように、礼拝所を準備すると共に、飲食面をはじめ様々な情報を与え、ラマダーン月の断食時には食事を提供しています。「非ムスリム教徒といかに付き合えばよいか?」などといった、指導をしており、新しくムスリムとなる者への入信式や、ムスリムの結婚証明書の発行もしています。
 
 学院には信徒の生活上で起こる、様々な問題や疑問に対しての回答を与えるという重要な役目があります。ムスリムが抱く全ての疑問、例えば、商売上のこと、料理店を出すときのやり方、銀行で利息を受領してよいのか悪いのかなど、様々な質問が出てきたとき、その解決を助けるため疑問に答えてやらねばなりません。なぜならばイスラームは生活全般にわたっているからです。
 
 こうした教育を行うために、イマーム大学の分校は全世界に6校置かれています。西側諸国ではワシントン、アジアでは東京にあり、イスラームの正しい姿を知らせ、語学教育、文化交流を行うよう日々つとめています。

Q:イスラームは行動様式や規範がしっかりしていると聞きますが、そうした眼から見て、現在の日本人に触れてみてどう思われますか?

A:日本人は道徳的な基本がしっかりしており、イスラームが教えていることを、そのままよく実行していると思います。教育、経済、社会、生活全般から余暇の使い方まで、道徳があり、秩序正しく、他人への気遣いまで、イスラーム的に見て100点満点に近いと思います。

 聞くところでは最近、家族崩壊があるとのことですが、これは子供を犠牲にしてはならないこと、母性や父性を確立させる教育が必要という事でしょう。また、少子化問題には女性の高等教育の普及など色々な側面があるでしょうが、社会が解決せねばならない問題です。

Q:先の回答の中に、イスラーム教育の一分野として“情報”がありましたがこれについて具体的に説明してください。

A:情報には、記録、書籍などあり、記憶による伝播、書簡、モスクでの説教、また、アラビア詩による普及などがあります。

 この中でもモスクの存在は重要であり、イスラーム地域では100軒の家があれば、必ずそこに1つのモスクが存在しています。モスクは1日5回、人間が神に向かって祈る場所であり、友人同士が顔を逢わせるところです。個人や近所の問題が話し合われますし、友人と一緒に勉強する場所でもあります。また、現実の世界をしばし離れて心の平穏を得る絶好の場所なのです。ですからイスラーム圏では自殺者が殆どいないのです。

Q:日本にはムスリムが殆どいませんが、それは何故だと考えますか。

A:確かに世界各地には多くのムスリムがいます。アメリカには600万の信徒がいますし、ヨーロッパにも多くいます。これにはイスラーム側の理由と日本側の理由があるでしょう。
 
 イスラーム側の理由としては、日本が極東に位置した地理的に最も遠い国であったこと、アラブからの移住者、移民が皆無であったことが挙げられるでしょう。日本側の理由は、日本が国際的にローカルの位置にあり、それゆえ性格的に社交性に富んでいないこと、更には、日本語という言語障壁が存在していることに起因するのではないかと思います。


学生さんからの感想・メッセージ

 上の会談について5月21日、学生から下記のメッセージが寄せられました。
 
イブラーヒーム アル=マージド学院長様

 暖かな日々が続いておりますが、いかがお過ごしですか。先日は学院内をご案内していただき、またお時間を割いての貴重なお話をありがとうございました。

 イスラム教という視点からの教育の話をしていただき、特に家庭での教育について共感いたしました。“正しい家庭から正しい社会が生れる”という考えが、日本では少しずつうすくなってきているのではないでしょうか。日本ではほとんどの人が無宗教であるため、イスラム教に限らず、宗教全般に対して身構えてしまう風潮があるように思います。私は信仰がないことも立派な一つの選択だと考えますが、それは無関心から生れずに、相互を尊重した上での選択であるべきだと思います。

 私が抱いていたイスラム教への考えは「1日に5回も」ということです。しかし、モスクが一種の地域の集会所という働きをもち、心に平安をもたらしていると聞いて、素敵だなあという考えに変わりました。きっと、時間がゆったりと流れているのだろうと想像します。それがかえって在日ムスリムの方が日本で過ごしにくい原因の一つかも知れませんが、日本が多様な文化、宗教、慣習に寛容な国になることを願います。
 
 最後に、一同を代表して御礼を申し上げます。有難うございました。

東京大学文科二類2年、光田 朋子 
 



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2002年 アラブ イスラーム学院