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アラブが日本に寄せる期待は今も変わりはない。1976年末に来日したアティ
ガOAPEC(アラブ石油輸出機構)事務局長の次のような言葉がある。「われわれ
発展途上国の人間にとって日本は希望とインスピレーションの源泉であります。
日本を見ていると本当に経済開発と社会的変革という基本的問題に人間は成功裡
に対処する能力があるのだという信念を抱くことができるのであります」
冥利に尽きる賞讃の言葉であるが、筆者は決して単なる外交辞令とは思わない。
1977年2月、永野重雄日本商工会議所会頭を団長とする大型経済使節団がア
ラブ湾岸諸国を訪問したおりに、アラブ首長国連邦のオタイバ石油相は、「日本
は国造りを百年でやりとげた優秀な技術を持っている。それを国造りを急いでい
るわれわれに提供して欲しい」と要望した。
つまり、端的にいってアラブ諸国は日本がアラブの国造りの実現のためにその経
験、能力を活かし、もっと積極的に協力してほしいと呼びかけているのである。
アラブ人が抱く日本へのこうした期待と親日感情は、日本にとって“貴重な財
産”ではないか。もしアラブ諸国をはじめ発展途上国からの期待、情熱を一種の
エネルギーとして計算することができるなら、日本は世界一の“期待エネルギー
保有国”といえると思う。
ところで、アラブの熱い視線がそそがれているのは、一体日本の何にたいしてで
あろうか。それは経済大国日本のGNPの数字よりも何よりも、今日の日本を築き
上げてきた日本国民にたいしてなのである。
アラブの日本への慕情の対象が日本国民であることをずばり指摘しているのは、
日本人より一層日本人的だと自称されている親日家のアーメル・シャンムート駐
日ヨルダン大使の次の言葉である。
「私は日本人をとても誇りに思っているのです。というのは、日本は小国で資源
と言えば火山と地震しかないというのに、日本人はほとんどゼロに等しい資源の
中からこんなに素晴らしい国をつくっているのではありませんか。日本人は恐ろ
しい戦争体験をしていますし、日本の二つの大都市は灰燼に帰してしまいまし
た。そしてこの廃墟の中から、日本は以前よりももっと強大となったのです。そ
れは日本の宝は地下にあるのではなく地上に、つまり正直さ、誠実さ、勤勉さと
いう資源を備えた日本人一人一人なのです」(「アジア」1974年9月号)
すでに9世紀にアラブの地理学者は、おそらく倭国と新羅の音が訛ったのであろ
うが、日本をワークワーク、朝鮮をシーラと呼んでいたというが、今日のアラブ
人として、現代の日本の中に発見したキラキラ光る鉱脈こそ、日本国民の一人一
人であるというシャンムート大使の指摘は、ともすると“国民不在”といわれが
ちな今の日本の政治の中だけにひとしお身にしみる言葉である。
筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)
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