アラブ案内
 

【アラブ栄光の歴史 12】
〜イスラムの時代-4〜

モロッコでつくられたコーランの表紙
(69) モロッコでつくられたコーランの表紙のデザイン。17世紀。
アラビア文字による書道
(70) コーランの一節を船の形で書いたアラビア文字による書道。

中世アラブの装飾芸術
(71) コーランの章句に施された中世アラブの装飾芸術。
アラベスク模様
(72) エルサレムの岩のドームに描かれたアラベスク模様。

アリフ・ライラ・ワ・ライラ
(73) カイロで発行されている“アリフ・ライラ・ワ・ライラ(千夜一夜物語)の一部。
行進出場を待つ騎士たち
(74) 行進出場を待つ騎士たち。

裁判官に許しを請う男
(75) 裁判官に許しを請う男。
モスクで説教をする人
(76) モスクで説教をする人。

ラクダを飼う男
(77) ラクダを飼う男。
アンタラとアブラ
(78) 現代の画家アブ・スーシィ画<「アンタラとアブラ」。アンタラ物語は、ジャーヒリア時代の詩人で勇士のアンタラの武勇伝。アブラは彼の恋人。


中世アラブの芸術

 中世アラブ文化はけんらんと輝いている。

 偶像崇拝を禁じるイスラムの教えのため、絵画、彫刻には大きな発展はみられ なかったが、これを補って余りある芸術的高さに発達したのは、エルサレムの岩 のドームをはじめとする宗教建築と、華麗な美しさをもつアラベスク模様という 装飾技術であった。幾何学模様、文字、草花の模様などイスラムの基本的装飾モ チーフをふんだんに駆使したアラベスク模様は、交響楽にもたとえられる美しい デザイン芸術の宝庫である。

 また聖なるコーランを写すために書道(カリグラフィー)も発達し、最も代表 的な、楷書、行書にあたるクーフィー体、ナスキー体など美しい書体が創り出さ れ、書物としてのコーランも、紙、書法、装飾、ミニアチュール、装丁など優れ た芸術作品として造られてきた。

 中世アラブの絵画は、このコーランを飾るミニアチュールから出発し、種々の 書物の挿絵に発展した。中でも、中世語り物文学の最高峰ともいうアル・ハリー リーの「マカマート」を飾ったヤヒヤ・ワスティ(1237年バグダット生れ) の挿絵は当時のアラブ社会を見事に活写した傑作である。

 マカマートとは場所マカームの複数形で、処世術に長けた若い主人公が各地で 発揮する機知、武勇、雄弁の物語を、宗教的説教に用いられていたサジューとい う韻を踏んだ散文詩で語る語り物文学である。

 そのほか中世アラブの語り物文学の中で有名なのは、「英雄アンタラ物語」、 「アブゼイド・エル・ヒラール一代記」、それに日本でもなじみの深い「千夜一 夜物語」などである。


マカマート
 13世紀、アル・ハリーリーの「マカマート」にイラクのヤヒヤ・ビン・ヤヒ ヤ・ワスティの描いた挿絵(74、75、76、77など[*])は中世アラブ世 界を活写している。偶像崇拝を禁じるイスラム社会にあって、自分の絵に堂々署 名したのは彼だけという。「マカマート」は、風来坊があちこちを流浪しながら 展開するペーソスと滑稽味に富んだ物語を美しい散文詩で朗誦する、語り物文学 の一つである。ハリーリーの作風は、修辞法の巧みさ、アラビア語の美しさで知 られている。


筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)

                

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