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中世アラブの科学
現代の科学技術の進歩に大きな貢献をしたのは、中世アラブにおける科学の発
達があったことを忘れてはならない。
先にも紹介した9世紀バクダットに建てられた「知恵の館」には、図書館、病
院、天文台が付設されて、ギリシャの哲学、科学書が盛んに翻訳され、アラブ独
自の科学も著しい進歩をとげている。この成果がやがてスペインのコルドバに栄
えた西方イスラム世界を通じてヨーロッパに伝わり、文芸復興を促したのであ
る。
中世アラブの科学の中でもとりわけ著しい進歩を遂げたのは、数学、天文学、
医学などであったといわれるが、インドに起源をもつアラビア数字やゼロの使用
により、代数、幾何、三角法などを発展させ、イスラム天文学の揺籃の地となっ
たバクダットの天文台を中心に、天体観測器などを作製したり、地図を作ったり
した。
医学の分野でも、哲学、天文学、錬金術にも長じた独創的な大医学者、ラー
ジーが「天然痘とはしか」や「医学全書」などを著わし、エジプトのユダヤ教徒
で医師のイスハークの「熱論」「尿論」等はラテン語に訳され、ヨーロッパの医
学界に大きな影響を与えた。
砂ぼこりの立つアラブでは眼科の研究が進んでいたといわれ、大気による光線
の屈曲を明らかにしたイブン・アル・ハイサムの「視覚論」などが名高い。今、
アラブが近代工業の導入に何らの違和感を抱いていないのもこの中世アラブの科
学技術の発展への誇りがあるからだろう。
筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)
(2007年2月6日更新)
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