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現代の美術
これまで日本で開かれたオリエント時代の美術展の影響もあって、アラブで美
術品に値するのは、古いものしかないと思っている人が多いのではないだろう
か。
しかし、アラブ諸国でも現代美術運動は今展開中である。エジプトでは、日本
の高村光雲にあたる現代エジプト彫刻の先駆者マフムード・モクタールがパリで
の留学を終え、20世紀前半の美術運動を指揮した。
彼の傑作の数々、「村長」、「砂嵐」、「ナイルの花嫁」等はカイロのモク
タール美術館に陳列されている。モクタールの最大の課題は、古代エジプトの輝
かしい完成された彫刻芸術をいかに現在の中に生き返らせるかということであっ
た。
一方、イラクの現代美術運動も1930年代に萌芽し、1950年代に活発化
し、現在の共和国体制になってから隆盛をみるにいたった。
かつて中世には、ヤヒヤ・ワスティなどバクダット派の画家が活躍したイラク
の現代美術は、一見シュールリアリズム、キュービスムといった前衛的傾向の作
品が目立つが、実はこれらの傾向はイラク固有のものであり、他の流派の美術運
動の影響を受けたというよりも、現代イラク芸術の源泉は遠くバビロニア、アッ
シリア、シリア、さらにはイスラムの伝統にまで遡るという。
バクダットの解放広場の「自由のモニュメント」の製作者、ジャワード・セ
リームは、長くイラクの現代芸術運動の旗手をつとめた彫刻家、画家だったが、
このレリーフの完成に2年をかけたのち、1961年に死亡した。バクダットの
町のここかしこに、「アリババと40人の盗賊」をはじめ詩人、哲学者などの近
代彫刻が建っており、さながら街頭美術館の観がある。
もちろん、こうした美術運動は他のアラブ諸国でも進められており、レバノン
とアルジェリアの現代絵画展は二科会の斡旋により日本で公開されたことがあ
る。
筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)
(2007年6月26日更新)
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