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絵画
日本画壇の重鎮、芸術院会員杉山寧氏の代表作には古代エジプトをテーマとし
た「穹」などがある。東西文化交流の歴史を畢生の仕事として描く平山郁夫画伯
の「シルクロード展」は、国際交流基金の主催でアラブ数カ国で開かれ、反響を
呼んだ。また、東京芸大の吉田左源次教授は、日本での“イスラム文様とアラビ
ア文字装飾展”以後、注目すべきユニークな芸術活動を展開中である。
これらの作品は、いわば日本の芸術の力で日本に築かれたアラブの芸術的モ
ニュメントであろう。それは今でもアラブの教科書にのり、その朗読が放送され
ているというH・イブラヒームの詩「日本の乙女」がアラブの心の中に築かれた
日本のモニュメントであるのと同じである。
今、アラブ諸国には日本の自動車、トランジスターラジオが氾濫しているが、
貿易量の拡大に比べると日本人の“心”を伝えるような芸術の紹介は皆無に等し
い。
かつてイスハック駐日スーダン大使は「物を売ったり、買ったりする貿易関係
だけに頼るのでは不測の事態が起りかねない。このような関係は健全とは思えな
い」と経済一辺倒の両国の関係に危懼を表明されたが、「貿易の切れ目が縁の切
れ目」では余りにも淋しい。
エジプトの映画監督のS・アブデッサラームは日本の小林正樹監督の名作「怪
談」の耳無し芳一のシーンから、大きな技術上のヒントを得て、彼の作品「王家
の谷」の中に生かしている。
昭和3年の市川左団次のモスクワでの歌舞伎の公演がエイジェンシュタインの
モンタージュ論に影響を与えたように、アラブと日本の芸術の“シルクロード”
は今始まろうとしている。
筆者:阿部政雄
転載:「アラブ案内」グラフ社(1980年発行)
(2008年4月1日更新)
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