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成田からフィリピン航空で経由し、サウジアラビアの首都リヤドにあるキン
グ・ハーリド空港に到着したのは3月17日木曜の夜9時過ぎだっただろうか。
リヤドに滞在経験もある頼もしいH団長の指示のもと入国ゲートへと向かう。し
かし、その後事件(?)は起きた。
| H団長 |
「おかしいなあ、出迎えのサウジの役人さんが来ているはずなのだが……。」 |
しばらく待つ一行。しかし出迎えの人たちが現れる様子はない。
| H団長 |
「しょうがない。先に荷物を取って入国ゲートを突破しましょう。外で待っている恐れもありますし。ただし、迎えがいないとバックの荷物を全部空けられる覚悟が必要ですが。」 |
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| 一同 |
「噂の荷物チェックですか? 凄まじいと聞いていますが……。」 |
そう。出発前に多くの人たちから言われたのがサウジの空港での厳重な荷物検
査。これは麻薬やアルコール類、ポルノなどのイスラーム的に良くない物を国内
に持ち込ませない事を目的とされているらしい。
私は特にいかがわしい物は持っていないのだがやられて気分の良い事ではな
い。そんなこんなを考えているうちに荷物受け取り場に到着。なぜか作業着(ツ
ナギ)を着たインドやパキスタンと思われる人たちが沢山いる。すると、なぜか
私の方に寄ってくる。
| パキスタン人らしき人物 |
「#$%#“$#$%&‘&%#$#」 |
何を言っているのかさっぱりわからない。すると、台車を指差し
と、聞きづらい英語。もちろん私の馬鹿でかいスーツケースは片足がもげていてもはや転がらないので台車は嬉しい。
すると、急に満面の笑顔をみせる彼。
と、荷物に向かい走りはじめる。
と、話し掛けてくる彼。なぜこいつが私のバックを探すのだ? と、疑問に
思っているとH団長が登場。
| H団長 |
「鈴木さん、ポーター雇ったんですか?」 |
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| 私 |
「は? 何かわからないけど彼は荷物を運んでくれるようです。」 |
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| H団長 |
「鈴木さん、有料ですよ。」 |
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| 私 |
「え! だって彼が勝手にアラビア語かなんかで話し掛けてきて、その後台車を使うかと聞くから……。」 |
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| H団長 |
「おそらく彼はパキスタン人でしょうが、アラビア語はしゃべってないと思いま
すよ。単に英語の発音が悪いだけだと思います。」 |
そんなこんなでポーター君を雇う羽目になった私。他の団員は私の失敗を目撃
していたのでことごとくツナギ軍団の声を無視している。しかしながらこのポー
ター君は後に思わぬ活躍をする。
私の荷物だけでなく、他の団員の荷物まで運んでくれようとするP君。しか
し、私はあることに気がつく。サウジリアルを持っていないことだ。
| 私 |
「サウジリアル持ってないけど……。」 |
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| P |
「ドル持ってる? ドルでもいいし、持ってないなら中国のお金でも良いよ。」 |
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| 私 |
「おら日本人だから中国元なんぞもっとらんわい!」 |
財布を見ると、フィリピンで買い物した際の残りが10ドル程ある。足りるだ
ろうか……。
| 私 |
「10ドルしかないが、お釣りあるか?」 |
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| P |
「あるよ。心配しないでください旦那……。」 |
そう言って黙々と荷物を運ぶP君。そして荷物検査所に到着。そして20人ほ
どの列。団長が一生懸命「我々はサウジ政府に招かれたゲスト」と説明しても駄
目なようである。一同、荷物をぐちゃぐちゃにされる覚悟をしたそのとき、
見ると、空港職員すらいない無人のゲートに誘導しようとする。
| P |
「旦那、すぐ戻るからちょっと待っててくだせえ。」 |
そしてすぐに空港職員を連れて戻ってきた。
| 空港職員 |
「どこからきた? 日本? ふーん。どうぞ。」 |
荷物を空けられることなくあっさりスルー。他の団員も続けとばかりほぼ何事
も無くスルーしている。
| A団員 |
「いやー、鈴木君、お手柄だねえ。ポーター代半分払うよ。僕なんか荷
物パンパンに詰めてきたから一度開けられたらエライ事になるとこだったよ。そ
れに彼、なぜか僕の荷物まで持ってくれてるし……。」 |
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| 私 |
「いや、勉強代だと思って自分で払いますよ……。」 |
そしてついにサウジに入国を果たした。すると前方で大きく手を振る数人のサ
ウジ衣装の人たち。どうやらお迎えがやっと到着したらしい。
| ハーリド(この後ハーリドと言う名前の人物は3・4人登場するのだが) |
「いやーすみません。遅れました。ようこそサウジへ。私も昨年に団長として日本に行きました。」 |
急に親近感が湧く日本人団員達。
アブドッラー(その後アブドッラーは沢山登場するのだが……。) 「ようこ
そサウジへ。私も昨年日本に行きました。非常に素晴らしい国でした。今回の皆
さんのサウジ滞在中は私がずっと同行いたします。」
さらに親近感が湧く日本人団員達。このアブドッラー氏、見るからに良い人の
オーラが漂っている。
| ハーリド |
「さて、車が外に停めてありますので行きましょう!」 |
相変わらずP君は僕の荷物を押している。外までついて来てくれるようだ。
空港の外に出ると外はすでに真っ暗。暑いサウジを想像していたが意外にも肌寒
く感じた。
ここでP君とはお別れ。お迎えのバスに他の団員の荷物まで載せてくれた。ふ
と見ると、空港の外の柱にはキーホルダーやらカメラやら財布やら、ありとあら
ゆる物が貼り付けてある。
| 私 |
「ハーリドさん、これには何か意味があるのですか?」 |
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| ハーリド |
「あぁ、おそらくは誰かの落し物ですよ。サウジではシャリーアというイスラー
ム法によって人のものを盗む事は厳しく禁止されています。まあ、サウジで右手
の無い人を見たら盗みをした人だと思ってください。(注1)」 |
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| 一同 |
「おっかねえ……。なら確かに盗まないな。」 |
少し暗い雰囲気になったその時、タイミングよくP君が寄ってくる。
| P |
「旦那、荷物も積み終わったし、あっしはそろそろ。」 |
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| 私 |
「あー、ありがとう。10ドルしかないからお釣りくれ。」 |
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| P |
「はいよ。それでは。」 |
と、サウジ紙幣をくれた。後で換算するとお釣りは200円ほど。サウジの人
達に聞くと通常300円くらいを払えば良いらしいので実に2倍以上のお金を
払ったことになる。まあ大変役にはたったので良いのだが……。
さて、車に乗り込む団員。宿泊先のHoliday Innに向かう。しかし
ながら、すぐに異変に気付く。
| 団員T |
「てゆーか、車のスピード速くないですか? 普通に130・40キロくらいで
ていますが?」 |
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| 団員A |
「てゆーか、スピードはともかく、車間距離やばくないですか?」 |
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| 団長H |
「まあ、こんなものです。私はサウジに居た時は運転をしていましたが、ほとん
どの現地職員は恐ろしくて自分では運転しないようです。私もよく運転して隣国
に行きましたけどやはり怖かったです。」 |
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| 一同 |
「………………。」 |
空港からリヤドの中心部に向かう途中には多くの検問所が設置されていた。時
折停められている車もいる。しかし、一見すると平安な感じがする。少し安心。
むしろ心配なのは運転だ。運転手さんはどう見ても65歳オーバー(注2)。ス
ピードは130キロオーバー。車間距離は日本人の感覚の半分以下、つまりギリ
ギリ。しかしながら中心部に入ると混みはじめスピードも落ち着く。
空港から市内への途中には遊園地と思しきエレクトリカルパレードの世界や
TOYOTAやGMなどの自動車会社の看板、マクドナルドやバーガーキング、
ピザハットが立ち並んでいる。正直、アラブ世界にいる感じはしない。ただし、
人々の服装は間違いなくサウジ。女性はアバーヤを着用していて上から下まで
真っ黒なので、突然道に現れると非常にびっくりする。暗闇に見事なほど溶け込
んでいるからだ。
見ると確かにホリデーイン。8年程前に泊まったアメリカのホリデーインとの
大きな違いはホテルが自爆テロ防止の沢山のコンクリート防御壁に囲まれ、通常
荷物を降ろすために乗り付ける正面玄関のローターリーに通じる道にタイヤをパ
ンクさせる為の装置がついているあたりだ。(自爆テロ防止用であろう)
ホテルに入ると、そこはまさにホリデーイン。アメリカとさほど変わらない。
そしてサウジ側から簡単な説明を受け、各自自由行動となった。テレビ局で記者
を務めるI氏は早速市内探索に行くようであるが、私は疲れたので部屋で休む事
にする。部屋の中もまるっきりサウジの感じはなし。やはりホテルはホテル。し
かし、矢印でキブラ(メッカの方向)が示してあるところはさすがイスラーム教
の国といった感じである。シャワーを浴びると疲れていたのか、すぐに眠ってし
まった。
注1: 現在は初犯では右手を切られる事はほとんど無いという。
注2: 後に眼鏡は老眼鏡であること、また、年齢も65歳よりはるかに若いこ
とが判明。
筆者:鈴木 健
アラブ イスラーム学院 研究員
(2008年1月29日更新)
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