キングダムタワー
 

‐第四回日本・サウジアラビア王国青年交流使節団に参加して‐

【ジェッダ編 2】

オールドジェッダ



 2004年3月25日(木)、この日は朝からオールドジェッダと呼ばれる日 本で言う旧市街の見学に出かけた。写真では見たことがあるのだが、実際に目に するとその古さがより伝わってくる。傾いて今にも倒れそうな家、穴だらけの 家、廃墟のような家、様々だ。しかしなんとなく落ち着くのはなぜだろう。

 観光者用に見学ができる古い家に上がらせてもらうと、中はもっと古い。落ち そうな階段や崩れそうな壁に手をかけて、やっとの思いで屋上へとたどり着く。 中は見た目よりはるかに広く、ジメジメした外とは違い、クーラーもないのにひ んやりとしている。

 屋上に上ると中々の景色。サウジ慣れしているH団長ですらカメラで写真をパ シャパシャと撮っている。確かに素晴らしい景色。近場の景色は古都なのだが少 し遠くを見ると近代的な光景が広がっている。なんか自分達だけが時代に取り残 されている感覚さえ感じる。素晴らしい……。と、浸っているとH団長の素晴ら しい一言。

H団長  「あそこに見える建物は公開処刑の場所として有名です。」

 雰囲気が少し壊れた。そんなこんなしているうちにアブから時間があるから好 きにしろと告げられる。勿論、私達はスークに行きたいと告げる。そして待望の 買い物タイムとなった。ジェッダのスークはかなり大きく、スークの入り口付近 にはROLEXなどを扱う高級腕時計店や金を扱う商店などがある。そしてショッピ ングセンターらしき建物もある。一見すると小奇麗でスークらしくないのだが、 奥に入れば入るほどスークらしくなっていく。

 皆、なんとなく一人では怖いのでまた数人づつのグループに分かれて行動する こととなった。私は、研究所のA先生にアラビア数字が書かれた時計を買って来 いと頼まれていたのでそれを目標に探索を開始した。途中、イスラーム教で使う 数珠のような物や、サッジャーダ(注1)を大量に購入し、とりあえずお土産を 確保した。スークなので値切り交渉を試みるのだがどこの店もいまいち反応が良 くない。ほぼ、

「ジュース分返してやる。」「ジュース分まけてやる。」

 という返事しか返ってこない。東南アジアなどではここで、

「なら別な所で買うから良いや。」

 という態度をみせると割安になるのだがサウジでは、

「そうか。またな。」

 という反応。店側がやけに強気。う〜む。まあ、値引かなくても日本人の感覚 からすると安いから良いのだが。

 せっかくサウジに来たのだからサウジ衣装を買おうとみんなで計画していたの で衣装屋に飛び込む。一応それなりの値段はするのだが、青年福祉庁の局長さん が着ていたものや、青年実業家が着ていた(注2)のとは何かが違う。

 イガール(輪っか)、シマーウ(頭にかぶせる白い布)、トーブ(白い洋服) の三点セットに私はガウンまで買ったのだが、トータルで250ドルくらいだっ たはずだ。まあ、着る機会はあまりないとは思うがとりあえず日本では買えなさ そうなので購入。やっとの思いでアラビア数字の時計も見つけ楽しい買い物タイ ムは終了した。

 その日の午後は個人経営の博物館を訪れたり、なぜかユースホステルに訪問し たりした。博物館でビックリしたのが、歴史的に価値があったり高価な品々(注 3)が非常に大雑把に展示されていた点。なんせ、壁展示してある刀や様々な展 示品は良く見るとボンドのような黄色い接着剤でベトベトに固められている。と ても再利用はできそうもないくらい。さらには展示品もホコリやサビだらけ。 ユースホステルに至ってはなぜここに連れてこられたのか最後までわからなかっ た。

 ジェッダでは4日間を過ごした。後半は一頭ウン千万するアラブ純血馬の訓練 場などにも訪れた。競馬をやらない私には単にかわいいお馬ちゃんとしか感じな かったが馬好きにはたまらないような所だったらしい。

 また、ジェッダはメッカ(注4)に近いため、たまたま団員の一人がメッカの 検問所まで行きたいと申し出た。しかしながら、ジェッダでの世話役だったアブ ダッラー氏(随行しているアブとはまた別。ジェッダにある青年福祉庁の職員ら しい。以後アブジェッダ)はこれに猛反対。メッカ行きを申し出たI団員と激し い舌戦が始まった。

I団員  「‘異教徒はこれより先、立ち入り禁止’って日本語で書いてある看板のとこまでなら良いじゃねえか?」
アブジェッダ  「駄目だ。嫌だ。断る。」
I団員  「だって他の日本人だって外国人だってよくそこで写真とってるじゃねぇか? なんで駄目なんだよ?」
アブジェッダ  「しつこい奴だな! 駄目なものは駄目なんだよ!」

 その後バス内は険悪なムード。I団員のだしたなぜメッカに行かせないかとい う結論は

「その日がたまたま金曜日でサウジの休日にあたること。また、時間が遅くなっ ていたので早く家に帰りたいから。」

 というものであったが、私は後日違う方のアブに聞いてみた。

私  「アブ、なんであのジェッダアブはあんなに嫌がったんだい? やはり2聖モスクの守護者であるサウジの国民としては異教徒にむやみに近づいてほしくないということかい?」
アブ  「まさにそのとおりだ。私は揉め事が好きではないからあの場では強くは言わなかったが私も反対だ。メッカは観光地ではなく聖地だ。」
私  「そうか、嫌な思いさせて悪かったねえ……。アブジェッダにも謝っておいてよ。」
アブ  「心配するな、そういえばあいつがお前はよい奴だと言っていた。俺もそう思う。」
私  「ありがとう。ま、僕も昔から揉め事は嫌いなタイプだからね……。」

 アブジェッダはその後ずっと不機嫌でしゃべろうともしない。だが、なぜか私 にはよく絡んでくる。

 そしてあっという間に時は過ぎ、リヤドに帰らなくてはならなくなった。正 直、リヤドのホテルのBLTサンドのおいしさを除けばジェッダの方がなんとなく 好きだ。いや、ジェッダが好きなのではなくひょっとするとまたあの恐ろしい国 内線に乗ってリヤドに戻らなくてはならないということへの拒否反応によるもの かもしれない。帰りの飛行機は慣れもあってか、それほど印象に残っていない。


注1: 礼拝する時に敷く絨毯のようなもの。
注2: 後に、オーダーメイドでトーブだけで1000ドル以上することが判明。
注3: H団長談
注4: ご存知、イスラーム教の聖地




筆者:鈴木 健        
アラブ イスラーム学院 研究員

(2008年5月7日更新)

                

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