預言者略伝
 

【伝記の基礎史料】


 アッラーは人類に対する功徳であり光栄として、預言者たちや使徒たちを送ら れた。その最後がムハンマド(祝福を)であった。アッラーが大地とその上のも のを(代理であるムハンマドから)引き継ぐまでの間、彼は信者の良き模範とさ れた。

 そこでこの伝記の影響が継続し引き継がれるように、多数の史料に残されたの である。われわれはそれらを振り返り様々な事実や情報を得ることが出来る。ま た明確な説明や、その誇らしい生涯から、種々の方法、行動、性向、道徳律など が見て取れる。

 彼の生涯を巡る基礎史料には、幾つかの種類がある。

1. 基本的史料文献(注1)
2. 二次資料

1. 最初のカテゴリーの史料として以下の五つがある。
  (一)聖クルアーン (二)正しい預言者伝承 (三)当時の詩
  (四)預言者の伝記 (五)正しい啓典

 以下にその概略を説明する。

(一)聖クルアーン ― これが預言者(祝福を)とその使命について絶対に最 も正しい文献である。それはアッラーが保存を保障されたものである。
 クルアーンに言う。
「本当にわれこそは、その訓戒を下し、必ずそれを守護するのである。」
(アル・ヒジュラ章15:9)

 その中には、預言者(祝福を)の栄光ある生涯の道標について、一般的で詳細 ではないが多くの言説がある。われわれはその中でも、教訓や訓示の与えられる 個所で十分だ。
 例えば、幼年期についてクルアーンに次の句がある。
「やがて主はあなたの満足するものを御授けになる。かれは孤児のあなたを見つ けられ、庇護なされたではないか。」
(朝章93:5―6)

 また彼が被った損傷、不信者達からの非難、あるいは彼が魔術師だなどといった悪口の他、預言者(祝福を)の聖遷、重要な戦闘、夜の旅の話など がある。(注2)

(二)正しい預言者伝承 ― ブハーリー、ムスリム、アブー・ダーウード、ア ンニサーイー、アッティルミズィー、イブン・マーッジャと言った一連の伝承者 達の編集した書物や、マタアルムワッタゥやアルマスナドの二書もある。

 預言者(祝福を)の生活や人生やジハードについて多数の伝承があり、多くの 学者が伝承者たちの繋がり方やその信頼度について確認して保存してきている。 (注3)

(三)当時の詩 ― 預言者(祝福を)当時の詩が多数残されている。ムスリム と多神教徒の間の戦闘や種々の事件が記録され、特に伝教を妨げ預言者を攻撃し た多くの不信者の詩人にムスリムは対決を迫られた。

 そこでかれらに対応し、また反論せねばならなかった。たとえばイスラーム側 の筆頭には、ハッサーン・ビン・サービット、アブドッラー・ビン・ラウワー フ、サイード・ビン・マーリックなどがいた。かれらの詩は、詩集やアラブ文学 全集などに入っている。

(四)預言者の伝記 ― イスラームの学者や歴史家達が預言者の伝記を記して くれた。預言者(祝福を)の生涯を著述し、その誇りうる人生を詳細に述べ編纂 した。それからそれを今度は様々な人たちが各地へ運んだ。

 その人たちとは、オスマーン・ビン・アッファーン、ウルワ・ビン・アッズバ イル・ビン・アルアワーム、イブン・シハーブ・アッザハリー、アースィム・ビ ン・ウマル・ビン・カターダ・アルアンサーリーなどがいた。

 その後からきた歴史家達も、伝記を編纂した。その令として、ムハンマド・ビ ン・イスハーク、イブン・ヒシャーム、イブン・サアド、アッタバリー、アルイ スファハーニー、アッティルミズィー、イブン・アルカイイム、アルカーディー・イヤード、アルカステラーニーなどである。(注4)

(五)正しい啓典 ― 律法と福音の二書にも預言者(祝福を)への言及があ る。これらの啓典を通じて、預言者(祝福を)やその子孫の事を人々は知ってい た。しかしそれらの情報を得て後に、これら正しかった啓典の改竄や入れ替えを した人たちが出たのである。
 ユダヤ人については、クルアーンに次のようにある。
「アッラーの御許から啓典(クルアーン)が下されて、彼らが所持していたもの を更に確認できるようになったが、……心に思っていたものが実際に下ると、か れらはその信仰を拒否する。」
(雌牛章2:89)

『マルヤムの子イーサーが、こう言った時を思い起こせ。「イスラエルの子孫た ちよ。本当に私は、あなた方に(遣わされた)アッラーの使徒で、私より以前 に、(下されている)律法を確証し、また私の後に来る使徒の吉報を与える。そ の名前はアハマドである。」だが彼が明証を持って現れた時、かれらは「これは 明らかに魔術である。」と言った。』
(戦列章61:6)

2.二次資料

 昔から各地の図書館には膨大な史料の蓄積がある。また預言者伝に関する、研 究も汗牛充棟である。アラブ人やそれ以外の人のものもある。ムスリム以外の東 洋学者のものもある。しかしその何れもが、イスラームの預言者の生涯につい て、驚きを隠せない。その偉大な諸特性と崇高な特徴に高い評価と称賛を惜しま ない。その生涯は真に称えられるべきものである。

 日本でも色々書かれてきている。書物、論文、あるいはインターネット情報も ある。真に預言者ムハンマドに、アッラーの祝福と平安あれ、である。

(注1)ムスタファー・アッスィバーイー『預言者の伝記―その教訓』ベイルート、イスラム書店、第9刷、1981年。25―31ページ。
(注2)同掲書、25ページ。
(注3)同掲書、26―27ページ。
(注4)同掲書、28―31ページ。



筆者:ムハンマド・ハサン・アルジール
アラブ イスラーム学院長      

(2007年7月3日更新)

                

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