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ダーウードが遣わされる前、イスラエルの民の間では統治は宗教と分離されてい
ました。彼以前に預言者であり且つ王であった最後の人は、ユーシウ・ビン・
ヌーンでした。彼以後、預言者たちが王権を持つことはなかったので、イスラエ
ルの民は益々暴政をふるい、次々と預言者たちを殺害したのです。
そのためアッラーは、彼らのうちの強大で横暴な王たちをして、彼らを支配させ
られました。王たちは彼らを迫害し、彼らの上に暴威を振るいました。イスラエ
ルの民は次々と戦に敗北していき、ついに櫃(ターブート:ムーサーが受けた十
戒を刻んだ石を入れた箱)を失ってしまいました。
櫃には、ムーサーとハールーン一族の遺品が入っていました。その中には、アッ
ラーがムーサーに下された板碑や、ムーサーの杖などが入っていたと言われてい
ます。かつてイスラエルの民は、戦の時にはターブートを携えていきました。そ
れによって静穏が彼らの上に降り、勝利をもたらすためです。しかし彼らはター
ブートを失くし、その中身を手放したので、彼らの状況は悪くなったのでした。
このような困難な状況の中、ある日イスラエルの民は預言者の許へ行ってこう尋
ねました。「我々は不義に遭う者たちではありませんか?」
預言者が「そのとおりです。」と言うと、更に「我々はバラバラに離散させられ
た者たちではありませんか?」と尋ねました。
預言者がまた、「そのとおりです。」と答えると、彼らはこう言いました。
「私たちがアッラーの道のために戦い、自分たちの地と名誉を取り返すために、
私たちを旗の下に集めることができる王を立てて下さい。」
しかし彼らのことを熟知している預言者は、こう尋ねました。「もし戦が課せら
れたら、あなた方は必ず戦いますか?」
すると彼らは言いました。
「私達はどうしてアッラーの道のために戦わずにいられましょうか。家を追わ
れ、子供たちはみな離散しているというのに。」
そこで預言者はこう言いました。
「誠にアッラーはタールートをあなた方の上に王として選ばれました。」
すると彼らは言いました。
「王たちの家柄―つまりユダヤの子孫―でもないのに、どうして彼が私たちの王
になれようか。それに彼は裕福でもなく、我々の中には彼より裕福な者がいると
いうのに?」
預言者は言いました。
「アッラーは彼を御選びになり、その知識と体力の強さによって、彼をあなた方
に優越させられたのです。」
それを聞いた彼らは、「彼の王権の徴は何ですか?」と尋ねました。
そこで預言者は、「彼はあなた方の許にターブート(櫃)を戻します。天使たち
がそれを運んでくるのです。」と言いました。そして実際にその奇跡は起こり、
ある日タウラーは彼らの許に戻ったのでした。
それからタールートの軍隊が準備されました。
軍隊は長い間進み続け、とうとう兵士たちは喉の渇きを覚るようになりました。
しかし王タールートは兵士たちにこう言いました。
「我々はやがて川にさしかかる。そこで川の水を飲んだ者は、軍隊から出て行か
せなさい。しかし水は味わわず、自分の唾液だけを味わった者は、私と共に軍隊
に残らせなさい。」
そして川にたどり着くとほとんどの兵士たちが水を飲み、軍隊から出て行きまし
た。タールートは、兵士のうち誰が自分に従い、誰が背くのか、また誰が強い意
志を持って喉の渇きに耐え、誰が弱い意志しか持たずにすぐ降伏するのかを知る
ために、このような試みをしたのです。彼と共に軍に残ったのはわずか313人
でしたが、彼らはみな勇敢な者たちでした。
タールートの軍の兵士は少数で、敵軍は強大でした。そのため兵士たちの中に
は、自分たちがジャールートと彼の軍隊より弱いと感じる者たちもおり、このよ
うに言いました。
「どうしてあの強大な軍を倒すことができようか?!」
しかしタールートの軍の信者たちはこう言いました。
「勝利は軍備によるものではない。勝利はアッラーの許からもたらされるの
だ。」
やがてジャールートが鉄製の盾と武器を持って現われ、誰か彼と決闘する者はい
ないかと呼びかけました。タールートの兵士たちは彼を恐れましたが、そこに一
人の年若い羊飼いが名乗りをあげて現われました。それがダーウードです。
ダーウードはアッラーを信じており、アッラーへの信仰こそこの世における真の
力であって、重要なのは武器の多さでも体の大きさでも、また無益な見かけでも
ないということを知っていたのでした。
そこで王タールートが、「ジャールートを殺害したものは軍の指揮官となる。」
と言うと、ダーウードは自分の杖と5つの石、そして石を飛ばす小さな道具を
持って前に進み出ました。ジャールートの方は鉄製の盾を身につけ、武器を装備
して進み出て、ダーウードを嘲笑して小ばかにしました。
ダーウードは道具に強い石をしかけて飛ばしました。すると石はジャールートに
当たり、ダーウードは彼を殺害したのです。それから戦が始まり、タールートの
軍がジャールートの軍を破って勝利したのでした。それからしばらくして、ダー
ウードはイスラエルの民の王になりました。アッラーはダーウードの手によって
預言者と王の地位を再度統合なされたのです。
アッラーは預言者ダーウードに大変多くの奇跡を授けられました。
アッラーは彼に詩篇(ザブール)を下され、
『・・・またダーウードには詩篇を授けた。』(聖クルアーン・夜の旅章55節
より)
また美しい声を授けられました。彼がアッラーを讃えると、人々が見る中、山々
や鳥たちも彼と一緒にアッラーを讃えました。
そしてアッラーは彼の手の中で鉄を軟らかくなさり、彼は人々が泥や蝋を扱うよ
うに鉄を扱ったと言われています。それは、ダーウードが鉄は熱によって溶ける
ことを知った最初の人だったという意味です。彼は鉄で盾を作っていました。
それからアッラーはダーウードを支持なさり、常に敵に対して勝者となさりまし
た。そして彼の王国を、戦なしでも敵を恐れさせるほど強大なものになさったの
です。
アッラーはダーウードに更に多くの恩恵を授けられ、彼に英知と断固たる決断力
を恵まれました。アッラーはダーウードに対し、預言者の立場と王権とに加え、
英知と真偽を見分ける力、また真実を識る力と支持を授けられ、彼は預言者、
王、そして裁判官になったのです。
ある日ダーウードは、礼拝を捧げてアッラーに仕えるための私室にいました。彼
はその部屋に入る時は、警護の者たちに、そこに誰も入らせず、誰にも礼拝の邪
魔をさせないように命じていました。
それなのに、私室の中で目の前に2人の男がいたので彼はとても驚き、彼らに恐
れを感じました。立ち入りを禁じていたのに彼らが入ったからです。
そこでダーウードは、「あなた方は誰ですか?」と2人に尋ねました。
すると片方の男がこう言いました。
「恐れることはありません。私とこの男の間には争いがあり、あなたに真理に
よって私たちの間を裁いてもらうためにやって来たのです。」
そこでダーウードは、「一体どんな問題ですか?」と尋ねました。すると最初の
男がこう言いました。
「これは、わたしの兄です。かれは99頭も雌羊を持っており、わたしは(只)
1頭しか持っていませんでした。(サード章23節より)・・・つまりそれは妻
のことです。・・・それなのに兄は私の妻までも自分に委ねよと言うのです。」
それを聞くとダーウードは、もう一方の意見や弁明を聞くことなく、こう言いま
した。
「かれがあなたの羊を、取り込もうとしたのは、確かに不当です。(サード章2
4節より) ・・・本当に共同で仕事をする者の多くは、互いに不義を働きます。
信仰する者たちは別ですが。」
その時突然男たちは姿を消し、ダーウードは驚かされました。彼らはまるで雲が
大気中で蒸発するように消えてしまったのです。それを見てダーウードは、あの
男たちが自分に教えを授けるためにアッラーから送り込まれた天使たちだったこ
とに気付き、争いの両者の言葉を全部聞かずに人々を裁いてはならないと悟りま
した。もしかしたら、99頭の羊の持ち主の方が正しかったのかもしれません。
そこでダーウードは礼拝にひれ伏し、サジダ(叩頭)してアッラーに御赦しを請
いました。
*ダーウードの死:
ダーウードはアッラーに仕え、死ぬまでアッラーを讃美しました。彼はいつも一
日おきに断食しました。一日断食し、翌日はそれを解くのです。アッラーの御使
いであるモハンマド・ビン・アブディッラーはダーウードについてこう言いまし
た。
《最良の断食は、私の兄弟ダーウードの断食です。彼は一日断食し、一日は断食
を解きました。そして敵と出遭った時には決して逃げませんでした。》
(アッ=ティルミズィー、アン=ナサーイーによる伝承)
また真正なハディースに拠れば、ダーウードは身内の女たちに関して大変強い嫉
妬心を持っていたと言います。彼女たちは彼の宮殿に住んでおり、宮殿の周りに
は、誰も彼女たちに近付かないように城壁がありました。
ある日女たちは、宮殿の中庭に男がいるのを見つけて言いました。「あれは誰で
すか。アッラーに誓って、ダーウードが見つけたら彼を打つことでしょう。」
そしてその知らせがダーウードの許に届き、彼は男に尋ねました。
「あなたは誰ですか?そしてどうやって入ったのですか?」
男はこう言いました。「私は、目の前にいかなる障害も立ちはだかることのない
者です。」するとダーウードは、「あなたは死の天使です。」と言って許しを与
え、死の天使は彼の魂を抜き取ったのでした。
ダーウードは100歳で亡くなり、息子のスライマーンが彼をエルサレムに埋葬
しました。彼の葬儀では何千人もの人々が彼に別れを告げましたが、太陽の光が
彼らを苦しめました。そこでスライマーンは鳥を呼び、「ダーウードの上に陰を
作りなさい。」と言いました。すると鳥は陰を作り、地上は暗くなりました。し
かしそれによって風が遮られてしまったので、人々は風が止まってしまって暑く
なったと訴えました。
スライマーンはもう一度鳥を呼び、今度は、「人々を太陽から遮って彼らに陰を
与えなさい。しかし(風を彼らから遮らないように)風の通り道からは遠ざかり
なさい。」と言いました。すると鳥はスライマーンの命令に従いました。
これが、人々が始めて目にした王スライマーンの業(わざ)だったのです。
執筆:ヌーラ アッダハマシ
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