預言者たち
 

【預言者スライマーン その1】


『スライマーンはダーウードの後を継ぎ・・・』(聖クルアーン・蟻章16節よ り)

スライマーンは、ダーウードの預言者としての使命と王国、そしてその主権を受 け継ぎました。アッラーはスライマーンに、彼以前には誰一人授けられたことの ない、また彼以後も審判の日まで誰一人授けられることのない偉大なる王国を、 彼に授けられました。

アッラーはスライマーンの祈願に応えられたのです。

『「主よ、わたしを御赦し下さい。そして後世の誰も持ち得ない程の王国をわた しにお与え下さい。」』(サード章35節より)

私たちはここで、アッラーが預言者スライマーンのために供されたものについて お話しましょう。アッラーは、彼以前にも彼以後にも、決して誰にも供されな かったものをスライマーンのために供されました。アッラーは彼のためにジン (幽精)を供されたのです。

スライマーンには、彼の命令に従わないジンを監禁して閉じ込め、鎖でつないで 懲罰を与える能力があり、スライマーンに従わない者にはアッラーが懲罰を与え られました。そのため、ジンたちはスライマーンの命令に従い、彼のために宮殿 や彫像―彼らの聖法では彫像が許されていました―、また巨大な器や大釜を作り ました。それらは、その大きさゆえに動かすことができないものでした。そして ジンたちは彼のために深海をもぐり、真珠や珊瑚、鋼玉などを採りました。

またアッラーはスライマーンに風を供され、風は彼の命令に従って吹きました。 そのため彼は戦において風を用いました。スライマーンの許には木製の巨大な敷 物がありました。彼はその上に乗るよう軍隊に命じ、それを持ち上げて望みの場 所へ運ぶように風に命じます。それで軍隊は、超高速度で目的地へと到着するの でした。

アッラーがスライマーンに授けられた恩恵の中には、銅の溶接がありました。か つて彼の父ダーウードのためにアッラーが鉄を軟らかくなさり、その溶接方法を 教えられたように。スライマーンは、戦時にも平時にも、溶かした銅を大変有効 に役立てました。

そして最後にスライマーンの軍隊の恩恵を挙げましょう。彼の軍隊は、人間とジ ンと鳥によって構成されていました。彼はそれらすべての言葉を解していたので す。

スライマーンは馬をこよなく愛し、特にサーフィナート(駿馬)と呼ばれる馬を 好みました。それは、最も優れた種類の馬で、最も速く走る馬です。ある日の昼 下がりに、スライマーンの前で駿馬たちが献上され始めました。それは2万頭を 超える駿馬だったとも伝えられています。スライマーンは馬たちを眺めて思いを めぐらし、献上の時は長引きました。そしてアッラーを念じる日々務めを忘れて しまい、日が暮れてからやっとそれに気がついたのです。馬への愛着が、日が暮 れるまで主を念じることを忘れさせたので、彼は自分を責めました。そこで彼は 先ほどの馬たちをもう一度自分の許へ連れ戻るよう命じ、

『そしてかれは、馬の足と首を切り落としてしまった(サード章33節)』ので す。

彼は剣を取り、馬たちの足と首を打ち始めたのです。馬たちにとらわれてアッ ラーへの念唱を忘れないために。

また伝えられるところに拠れば、スライマーンはある時、一晩に99人の妻たち と交わることを誓いました。彼女たちがそれぞれアッラーの道のために戦う男児 を産むように。アッラーは彼にそのための力をお与えになっていたのです。しか し彼はその時「アッラーの御心ならば」と言うのを忘れたので、彼女たちはただ 一人を除いてはみな身ごもらず、身ごもったその妻が産んだのは足も腕もない男 児でした。そのためスライマーンはアッラーに御赦しを願い、アッラーは彼を御 赦しになりました。

アッラーはスライマーンに、裁きにおける英知を授けられました。聖クルアーン は私たちに多くの場面を語り、その中にはスライマーンの英知や、自分に差し向 けられた問題において正しい裁きを下す彼の優れた能力が現われています。

それらのエピソードの中には、ダーウードの時代に起きた事柄もあり、アッラー はこう仰せられます:

『またダーウードとスライマーンだが、ある者の羊が夜間耕地に迷い込み、作物 を荒したが、それについて裁判した時のことを思いなさい。われはかれらの裁判 の立証者であった。われはそれをスライマーンに理解させた。そしてそれぞれに 判断力と英知を授け、・・・』(預言者章78〜79節より)

ダーウードがある日、いつものように人々の間に起きた問題を裁いていると、あ る畑の持ち主がもう一人の男を連れてやって来て、言いました。
「預言者様、この男の羊が夜中に私の畑に降りてきて、畑の果実を全部食べてし まいました。そこでその弁償について判断していただくために、あなたの許へ やって参りました。」

ダーウードは羊の所有者に尋ねました。
「あなたの羊がこの男の畑の果実を食べてしまったというのは本当ですか?」 すると羊の所有者は、「はい、そうです。」と言いました。
そこでダーウードはこう言いました。
「羊が食べてしまった畑の作物の代償として、あなたの羊を彼に与えるよう言い 渡します。」

その時スライマーンはこう言いました。―アッラーは、スライマーンが父親から 受け継いだものの上に更なる英知を教えられたのです。―「私には別の裁きがあ ります、父上。」そこでダーウードは、「言いなさい、スライマーンよ。」と言 いました。するとスライマーンはこう言いました。

「私は羊の所有者に対し、羊が荒らした畑を預ってそれを直し、木を植えて大き くなるまで育てるよう言い渡します。また畑の持ち主に対しては、その間羊を預 り、羊毛や乳を自分に役立て、またそれらの羊のうちから食するよう言い渡しま す。そして畑が元通りに返されれば、畑の持ち主は自分の畑を受け取り、羊の所 有者に羊を返すのです。」

ダーウードはそれを聞いて言いました。
「それは偉大なる裁きです、スライマーンよ。あなたに英知を授けられたアッ ラーに感謝を捧げます。」

また真正ハディースの中に伝えられるエピソードもあり、アブー・フライラが伝 えた聖預言者モハンマドの言葉にはこうあります:

《2人の女がいて、それぞれ息子を持っていましたが、狼がやって来て彼女たち の息子を一人連れ去ってしまった時、一方の女が相手の女に、「狼はあなたの息 子を連れ去りました。」と言い、もう一方の女も彼女に、「狼はあなたの息子を 連れ去りました。」と言いました。二人がダーウードに裁きを求めると、彼は年 長の方に利する判決を下しました。そこで2人はダーウードの息子スライマーン の前に出て、そのことを話しました。するとスライマーンは、「ナイフを持って きなさい。子どもを2人に分けよう。」と言いました。それを聞いた年少の女は こう言いました、「いいえ、(そんなことはなさらないで下さい)。アッラーが あなたに御慈悲をかけられますように。それは彼女の息子です。」 それを聞い てスライマーンは、年少の女に利する判決を下しました。》
(ムスリムとアル・ブハーリーによる伝承)
また聖クルアーンは私たちに、スライマーンと蟻の驚くべきエピソードを語って います。
『スライマーンの命令でかれの軍勢が集められたが、かれはジンと人間と鳥から なり、(きちんと)部隊に編成された。

やがて蟻の谷に来た時、一匹の蟻が言った。「蟻たちよ、自分の住みかに入れ。 スライマーンとその軍勢が、それと知らずにあなたがたを踏みにじらないよ う。」

そこでかれ(スライマーン)は、その言葉の可笑しさに顔を綻ばせ、(祈って) 言った。「主よ、わたしと両親に与えられたあなたの恩恵に感謝し、あなたの御 喜びに与かる善行に励むようわたしを励まし、またあなたの慈悲で、わたしを正 しいしもべの中に入らせてください。」』(蟻章17〜19節)

スライマーンは蟻の話を聞いて、その言葉と蟻が思っていることに顔を綻ばせま した。その威力と軍勢にもかかわらず、スライマーンは蟻にも慈悲深い人でし た。彼はそのささやきを聞き、いつでも前を見ており、蟻を踏み潰すことなどあ り得ませんでした。スライマーンは、アッラーが授けてくださったこの恩恵にい つでも感謝を捧げました。慈悲や温情、そして同情と優しさの恩恵に。


執筆:ヌーラ アッダハマシ

                

(→バックナンバー
(→週刊アラブマガジンのトップ


 
↑UP↑

前に戻る


アラブマガジンへもどる

アラビア語カフェ | アラブ イスラーム学院 | サイトマップ | ヘルプ



2006年 アラブ イスラーム学院