預言者たち
 

【預言者スライマーン その3】


バルキースの使節団はサバアに戻るとすぐに女王の許へと駆けつけ、自分たちの 国が危険に晒されていると話しました。そしてスライマーンの威力について、ま た彼の軍隊を制止することなど不可能だということについて伝え、バルキースが スライマーンを訪問して彼の満足を得るべきだと理解させました。そこで女王は 早速準備をし、スライマーンの王国へ向けて旅立ちました。

スライマーンは王の議会で、首長や宰相、軍の指揮官や学者たちの中に座ってい ました。彼はバルキースのことを考えていました。彼女が自分のところへ向かっ ていることを、彼は知っていたのです。スライマーンは、自分の威力で彼女を圧 倒しようと内心決めていました。それが彼女をイスラーム(唯一なるアッラーへ の帰依)へと向かわせるはずだからです。

そこで彼は周りの者に対し、バルキースが自分の許へ到着する前に、彼女の玉座 を持参できる者はいないかと尋ねました。女王バルキースの玉座は、彼女の王国 の中で最も優れた逸品だったからです。それは黄金とさまざまな宝石でできてい ました。玉座と玉座のある部屋とは、彼女の王国の優れた技術と精密な技巧のし るしだったのです。警護の者たちはその玉座の見張りを一瞬たりとも怠りません でした。

一人のジンが、自分は議会が終わる前にその玉座を持参することができると言い ました。―スライマーンはファジュルからズフルまで議会に参加するのです。― 彼は、宝石を無事に保護して玉座を運んでくることができると言いました。しか し、聖クルアーンの中で「啓典の知識を持つ者」として登場する別の者が、「私 は瞬きの間に玉座を持って参りましょう。」と言い、それは突然スライマーンの 前に現れました。

そしてその奇跡の後でのスライマーンの振舞いを見てください。彼は自分の威力 に喜んで道を誤ることはありませんでしたし、またその力を誇る気持ちによって 真実から迷い出ることもありませんでした。感謝するか恩知らずでいるかをその 威力によって試されたアッラーに、彼は感謝を捧げたのです。

スライマーンは女王の玉座を見て長い間考え、それからその玉座の装いを変える よう命じました。バルキースが来たら彼女を試すために、それにいくらか変化を 加えるよう命じたのです。スライマーンは彼女が自分の玉座へと導かれるのか、 あるいは彼女が導かれない者たちの仲間なのか知ろうと思ったのです。

またスライマーンは彼女を迎える宮殿を建てるように命じ、海沿いの素晴らしい 場所を選びました。宮殿の大部分が海上に位置する宮殿を建て、非常に頑丈でし かも極度の透明度を持ったガラスで宮殿の床を造るよう命じました。そこを歩く 者が、色とりどりの魚たちが泳ぐ姿や、ゆらゆらと揺れ動く海藻を眺められるよ うに。

やがて宮殿は完成しました。宮殿の床に作られたガラスは、余りの透明感に、そ こにガラスがあるようには見えませんでした。宮殿の床は海に姿を消して溶け込 み、それは海上に浮かぶ薄いガラスの覆いとなりました。

そしてバルキースが到着し、スライマーンはバルキースを彼女の玉座へと連れて 行きました。彼女はそれを見ましたが、それは完全に自分の玉座のようにも思え ましたが、そうでないようにも思えました。もし自分の玉座だとすれば、一体ど うやって自分より早く到着したのか?しかしまた自分の玉座でないとすれば、一 体どうやってこんなにも精密に模倣ができたのか?

スライマーンは、玉座を見つめているバルキースに言いました。

『「あなたの玉座は、このようであったのか。」』(聖クルアーン・蟻章42節 より)

バルキースは少しの間迷ってから、こう答えました。

『「それらしゅうございます。」』(蟻章42節より)

そこでスライマーンはこう言いました。

『「わたしたちは、彼女より以前に知識を与えられ(アッラーに)帰依、服従し ています。」』(蟻章42節)

スライマーンのこの言葉は、彼女が信じる教義や知識と、スライマーンのイス ラーム(アッラーへの帰依)の教義や英知との差を示しました。太陽を崇める彼 女の信仰と彼女の民の知識レベルは、スライマーンの知識や彼のイスラームの前 では、比べるべきもないものでした。バルキースは、そこにあるのが自分の玉座 であり、スライマーンの許へと向かう自分に先んじて着いたことを悟りました。 つまり彼女は、預言者であり王であるスライマーンの威力を悟ったのです。

バルキースは、スライマーンの信仰とアッラーへの礼拝に驚かされました。工業 や芸術、科学などにおける彼の高度な発展に驚かされたのと同様に。そして彼女 は、スライマーンのイスラームと彼の知識や英知との深いつながりに、何よりも 大きく驚いたのです。バルキースは、自分の民の信じる教義はスライマーンの前 では地に落ちると思いました。そして彼女の民が崇める太陽も、至高なるアッ ラーが創られたものでしかなく、しもべたちのために供されたものに過ぎないと 悟ったのでした。

それからバルキースは宮殿に入るように言われました。
そこを見ると彼女にはガラスが見えず、ただ水があるように見えたので海に 入ってしまうと思い、衣装が濡れないように裾を上げて両足を現わしました。

そこでスライマーンは彼女に、衣装が濡れるのを心配しなくてもいいと注意し、 そこには水などなく、『「本当にこれはガラス張りの宮殿です。」』(蟻章44 節より)と言いました。それは滑らかなガラスであり、余りの滑らかさのために 目に見えないのだと。

その瞬間、バルキースはアッラーへの帰依を宣言しました。彼女は自分が自ら不 義を犯したことを認め、『「(今)わたしは、スライマーンと共に万有の主に服 従、帰依いたします。」』(蟻章44節より)と言いました。そしてバルキース の民も彼女に従い、アッラーに帰依したのでした。


執筆:ヌーラ アッダハマシ

                

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