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巡礼の最初に来る儀礼は、イフラームです。イフラームしない人は、巡礼する
ことはできません。これが巡礼第一の柱ということです。
巡礼中は、香水、散髪、爪切り、性交渉、結婚、狩猟などが禁じられ、また心
構えの上でも当然厳粛で敬虔な気持ちを維持することが求められます。これらの
禁忌(タブー)を遵守する状態をイフラームといいますが、同時に男性が着用す
る縫い目のない二枚の白い布も同じ言葉で、イフラームと呼んでいます。
ちなみに女性は普段着で構いません。イフラームがいらないだけではなく、通
常のベールや頭覆いも必要ありません。ところが巡礼中も知らない男性の前では
顔を隠すので頭巾をかぶっている人は少なくありません。それに白い服を着てい
ると、結局イフラームのようにも見えます。
聖域の境界に達すると、このイフラームに着替えます。それから巡礼の意図表
明をした後、続いて、アッラーに帰順しています、という巡礼固有の言葉を上げ
ます。こうしてイフラーム状態に入ることになるのです。
この言葉(タルビヤ)は次のとおりです。少し長くなりますが、これこそ巡礼
時期特有のものですので、確実にアラビア語で覚える必要があります。また現地
でもいたる所で耳にするものです。
「ラッバイカッラーフンマ・ラッバイク、ラッバイカ・ラー・シャリーカ・ラ
カ・ラッバイク、インナルハムダ・ワンニウマタ・ラカ・ワルムルク、ラー・
シャリーカ・ラク」
「あなたに仕えます、アッラーよ、あなたに仕えます。あなたに仕えます、あな
たに並び立つものは存在しません、あなたに仕えます。称賛と恩寵は、あなたの
もの、そして大権も。あなたに並ぶものはありません。」
最近はほとんどの人が飛行機でジェッダに到着するでしょうから、その場合の
実際の所を記しておきましょう。途中の経由地、たとえばシンガポールであると
かカイロの飛行場の中で洗浄して、白色の二枚の布に着替えてニラカアの礼拝も
しておきます。
従って二枚の布は、日本から持参の必要があります。イフラーム用のタオルが
なければ、当面は適当な大きさのシーツでも大丈夫でしょう。その場合、ジェッ
ダの飛行場内でもイフラーム用タオルを売っているので、そこで購入して着替え
ることができます。値段は安いものです。イフラームは何度着替えても構いませ
ん。
ジェッダ空港到着時にイフラームしていない人を見かけたことがありますが、
巡礼者ではないと見なされて、巡礼ヴィザで入国が認められませんでした。そう
なると大問題ですので、シーツでもよいので日本から準備しください。
経由地から飛行機がジェッダ近くになったら、ということは巡礼の聖域に近づ
いたならばその案内があるので、そこで巡礼の意図表明をして、上のタルビヤを
唱え始めるのです。
このタルビヤの仕方としては、皆と声を合わせて元気よく唱えること、カアバ
聖殿が見え始めた地点からは停止すること、聖マスジドを出たらまた開始して、
ついでは石投げが始まればそこで完全にタルビヤは終わることになっています。
イフラームの着用方法に、イドティバーグ(左肩掛け)というのがあります。
これはカアバ聖殿に、到着時のタワーフをするときに用いる方法です。左肩に布
の左右両端を掛けて、右の脇下に布の中央部分を抱える仕方です。これは到着時
のタワーフの初め3周を早足でするので、それを助けるためです。しかしタワー
フ終了と共に、この着用方は元へ戻す必要があります。
タオル二枚だけですから、冬に巡礼するときはかなり寒くて、大半の人は風邪
を引いてしまいます。筆者の経験では、日本の風邪薬くらいでは間に合いません
でした。食塩をたくさん持参して、一日何回もうがいを励行するのが、原始的で
すが基本のように思えます。
またサンダルも履きなれているわけではないので、これで何キロも歩くと擦れ
て痛くなります。踵の後ろ側にも紐がかかるようなデザインのものは、この点か
なり助かります。現地でもたくさん売っていますが、それは厳密には、ルール違
反だ言う人もいますので、要注意です。
白い色で統一されているので、現地では本当にどこの人かもよく分からなく
て、人が平等であることを芯から感じさせます。カアバ聖殿の蔽い布(キスワ)
は白、赤、緑、黒など過去には種々の色が試されました。しかしイフラームは初
めから白色で、それ以外の色になったことはありませんでした。
イフラームは巡礼後も大切に取っておいて、自分の死装束にします。自分の死
というものは当然のこととしても、実際は身近には感じていないものです。人生
の終わりに思いを致すための、貴重な素材にもなります。
(※) Photo Courtesy of Encyclopedia of the Orient
筆者:アミーン 水谷
アラブ イスラーム学院研究者
(2007年7月24日更新)
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