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「お父さんはどんな仕事をしているの?」と、娘が私にある日訊ねました。
「同級生のラドワのお父さんはお医者さんで、病気の人たちを治療しているし、
友達のメイのお父さんはエンジニアで、建物のデザインをしているわ。
近所のアビールのお父さんは、布地の商売をしていて、隣の子のお父さんは軍
隊で仕官をしていて、祖国を守っているのよ。私の叔父さんは学校の先生をして
いて、数学を教えているわ。
それでお父さんはどう? 私はお父さんの仕事がどんなか知らないの。私がい
つも見て知っていることは、お父さんは朝大使館へ行って、アスルの時間にはお
うちに帰ってくるということと、素敵な服を着て、毎週何度もパーティーに出か
けていくということ。
そして遅くに帰ってきて、その日のお昼をどんな風に過ごしたのか、とか、そ
の夜誰と一緒に過ごしたのか、というようなことを、お父さんはお母さんにさえ
何も言わない、ということだけ。
私がわかるのは、お父さんが外交官で、外務省に所属しているということだけ
なの。でも内務省の仕事は外務省の仕事と反対なの? 内務省には国の安全のた
めに働く人がいて国を悪くする人を良く見張り、警察がそんな人を捕まえて裁判
所に送るのよ。その人のことを裁判所が良く調べて必要な罰を与えるためにね。
でも悪いんだけど、お父さん、外交官の仕事ってどんなものなの? もし大使
館でのお父さん自身の仕事のことを余り話したくないのなら、外交官の仕事につ
いて話してくれないかしら?」
私は、娘が私との対話を望み、知識を増やそうとしている気持ちを評価し、
笑って答えました。
(私は前の記事で、今の世代の子供たちの方が、私たちの世代よりずっと大胆
で、対話やディスカッションの能力を持っている、と書かなかったでしょう
か?)
私は彼女の額に一つキスをして、それからこう言いました。
「政府の仕事はどれも互いに補い合って完全なものになっているのだよ。外交官
は、国の安全と平和と繁栄のために、そして人々の間に平和と愛を広めるために
働いているんだ。
それは、内務省に所属する警察官や、国防省に所属して国や国民の安全を脅か
す敵から国境を守る兵士と全く同じだけれど、ただ、彼らは軍服を着ていて、
我々は普通の服を着ているというだけなんだ。
彼らは武器や兵器で国の安全を守り、私たちは言葉によって―つまり、『声と
像』によって―国の安全を守るのだ。」
娘は、「声と像」という言葉に驚き、このようにコメントしました。
「『声と像』って、テレビドラマの仕事でしょ? それじゃあ、私が知らない
『外交チャンネル』っていうのがあるということ?」
そこで私はこう答えました。
「そう、『外交チャンネル』というのがあるんだ。でもそれは、読んだり見たり
聞いたりするものではないんだよ。ラジオやテレビや新聞なんかと違ってね。
私が言う『声と像』というのは、映画やテレビの世界のことではなくて、私た
ちを受け入れてくれる人々に、私たちの国や歴史や文明について話し、また私た
ちが解決のために友人たちの助けを求めているアラブやイスラーム世界の問題に
ついて―そのすべての問題の源であるパレスチナ問題のように―、話すこと
(『声』)を意味しているのだ。
それからアッラーが私たちに恵んでくださった聖地や、旅行好きの多くの人々
が訪れたいと望む我が国の遺跡や観光名所について紹介することもね。
今日では、観光は国の経済や国民の豊かさを支える重要な資源の一つなのだ。
観光によって多くの若者に仕事を確保することができるのだし、それだけではな
く、観光によって民族や国同士が互いに近づきになれるのだから。
また、『像』の方は外交官の目を意味しているのだよ。外交官の目は、派遣先
国、つまり接受国で起こる政治的、経済的、文化的出来事や、学問的発見のすべ
てを追うのだ。外交官は自分の目で見たことを自国の外務省に報告し、外務省は
その『像』についての報告を専門機関へと送る。
それは情報交換のためでもあるし、派遣先国が実施する人材育成のための機会
を自国のために有効に活用するためでもあるし、また日進月歩の最新技術を自国
へ運ぶためでもあるのだよ。その進歩の速さは絶え間ない追跡を要するのだ。
外交チャンネルの鍵は、学者や研究機関の人々に加え、政界・経済界の意思決
定者や、産業界・ビジネス界・金融界の責任ある地位にある人々と知り合うこと
で、彼らとの友情を得ることであり、まず友情の前に彼らの信頼を獲得すること
なんだ。
それは真実の言葉と、それを適切な方法で伝達することでしか実現しないの
だ。すべての社会に他とは違う考え方があり、その言葉をいつどんな機会に伝達
するのかという選択も、重要なことの一つなのだよ。
それには、派遣先国の歴史、文化、国民の考え方を良く知らなければならない
し、自国で起こる政治的、経済的、社会的出来事を逐一注視していくことも要求
される。
また話のきっかけとなるように、その時々の世界的な出来事も知っておかなけ
ればならない。派遣先国の責任ある立場の人に伝達しようとする情報を、目的に
かなうようにいかに届けるかが、外交官の腕の見せ所なのだよ。
もしも支援や助けを必要とする問題がある場合、外交チャンネルの役割は、派
遣先国の同業者に連絡を取ることから始まるのだ。つまりその国の外務省の人た
ちだよ。支援や助けを得るために、そのさまざまな専門分野で働く友人たちとの
知己をそれまでに得ておいた上でね。
『小さな私の娘』よ、パーティーを催したり参加したりすることの重要性はそ
こにあるのだ。パーティーは、文士や学者や芸術家たちに加え、政界、財界、経
済界、産業界、メディア界で責任ある立場の人々が集まる機会なのだから。
そのすべての人にそれぞれの役割があるからでもあり、また友人を増やすため
にはまず知り合いの数を増やすことが必要だからなのだよ。
それから、その接受国に派遣されている他国の外交官たちとの関係や、彼らと
の友情、そしてその友情を有効に活かすことの大切さも挙げなければならない。
その経験や試みによって、自分の次の赴任先が彼らの国になるかもしれないのだ
から。
あるいは、彼らのうちの誰かが、将来リヤドの我が国の大使館に赴任してくる
かもしれず、また彼らの中には、祖国で指導的ポストにつくような人物も出てく
るかもしれない。だから彼らはみな、我が国の友人として有益な人々なのだ
よ。」
私は娘に、他者との友情を得るにあたって人間的要素はとても重要だと話し、
それから、知り合った人の私生活の様子を知ろうと努める日本人の慣習について
話したのです。
日本人は始めに―歓迎のおじぎをする前に―、まず名刺交換をし、招待主は関
心を持って注意深くそれに目をやります。それから招待主のおじぎは、その客人
の地位に適した角度を取るのです。
そして会話は訪問の目的以上に多岐に渡り、話題は私的な事柄へと移ります。
たとえばその人の学位とか、今まで訪れた国とか、行ってみたい国とか。
一番目立つ話題は、おそらく共通の友人についてだと思います。それから家族
や子供について。そして客人を送り出すとすぐに、招待主はその客人の名刺に、
その人物についての特記事項や、家族や子供のことなど、個人的な情報を書き込
んでおくのです。
そしてその人物が再訪することになると―それが久しぶりであってもそうでな
くても―、主人は名刺入れを探し、先の名刺を引っ張り出して、自分が書き込ん
だその人物の個人的な情報を復習します。そして前回と同じおじぎで客人を出迎
えていろいろと尋ねます。
客人の家族や子供のことなど―おそらく子供たちの名前を口にすることもある
でしょう―。客人の気持ちはそれによって安らぎ、自分がその招待主に大切に思
われていると感じてリラックスし、双方に実りをもたらす愛情深い雰囲気の中で
会話が交わされるようになるのです。
この日本人の招待主の振る舞いは、外交官の仕事が持つ一面です。外務省に所
属する外交官にとって、これは大いに役立ち、助けとなるものです。また、どん
な職種においても、私たちすべてにとても役立つことです。
外交とは、相互理解と共存をもたらす他者との交流の芸術であり、個人と国民
の共通の目的や希望を実現するものなのです。
どうやら私は娘には長すぎる講義をしたようで、娘はあくびをし始めました。
そこで私は彼女におやすみのキスをして話を切り上げました。彼女と彼女の世代
の子供たちのために、私たちの時代よりももっと良い時代が訪れ、安全と安寧と
調和が広がるように願いつつ。
マドリードにて―ヒジュラ暦1426年ラマダーン月19日
筆者:モハンマド バシール クルディー
前駐日サウジアラビア大使
(2007年7月17日更新)
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