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アラビア語語源 −科学−

 

                           筆者:片桐早織
アラブ イスラーム学院司書

 アラブでは学問が一部のエリートによって独占されることはありませんでした。為政者は学者を保護、重用し彼らが必要とする設備を整えました。アラビア語は共通言語としても学問に益するところが大きく、特に科学はすばらしい発展をとげました。

化学
アラビアの化学は「実験化学」の始まりでした。彼らは多くの実験を積み重ね化学的方法を発明し、無数の化合物をつくることに成功しました。また多種多様の化学器具をも生み出しました。

alchemy
【アルケミー:化学・錬金術】
الكيمياء
アル・キーミヤーゥ
当時は厳密に化学と錬金術を区別していませんでした。後にこれが分かれて英語ではchemistry(化学)とalchemy(錬金術)になりました。
alcohol
【アルコール】
الكحل
アル・コホル
コホルはアラブの黒いアイラインのこと。コフルには細かいアンチモン粉末を使っていたので、アンチモンがその語源でもあります。もともとは「最も敏感なもの」の意味。
aldehyde
【アルデヒド:脱水素されたアルコール】
الألديهيد
アル・アルデーヒード
 
alembic
【アレンビク:ランビキ、蒸留器、浄化器】
الإنبيق
アルインビーク
 
alkali
【アルカリ】
القلو
アル・キルウ
「海草の灰」の意味。
amalgam
【アマルガム:水銀と他の金属との合金】
الملغم
アル・マルガム
ギリシア語の「やわらかい物質」に由来。
antimony
【アンチモン】
أنتيمون
アンティモーン
 
aniline
【アニリン:無色有毒の油状液体】
الأنلين
アル・アニリーン
 
benzine
【ベンジン】
بنزين
ベンジーン
 
elixir
【イリクサー:万能薬、錬金薬】
إكسير
イクシール
卑金属を黄金に変えると信じられた霊薬、いわゆる「賢者の石」。
natron
【ナトロン:天然炭酸ソーダ】
النطرون
アッナトローン
 
saccharin
【サッカリン:人工甘味料】
سكري
ソッカリー
ソッカル(砂糖)から派生して「砂糖のようなもの」の意味。
soda
【ソーダ】
صودا
ソーダー
 
sodium
【ナトリウム。天然炭酸ナトリウム】
صوديوم
スードゥーム
 
talc,talcum
【タルク、タルカン:滑石、タルカムパウダ】
طلق
タルク
 


医学・薬学
アラビアの医学はギリシアやペルシア、インドなどの影響を受けながら、実践的臨床的に発展しました。多くの行き届いた病院が設立され、「医は仁術なり」の医療倫理がありました。医師も薬剤師も試験による認定制で、医師には自分の扱った症例記録を一般公開する義務が、また薬剤師には新薬入荷の際、それを実験し結果を公表する義務がありました。このようにして医学・薬学の知識は飛躍的に拡大していきました。


camphor
【カンフル:樟脳】
كافور
カーフール
呼吸循環の興奮剤として用いる。
gauze
【ガーゼ】
الغزي
アル・ガッズィ
 
gypsum
【ギプス:石膏】
جبس
ギブス
 
massage
【マッサージ】
مس
マッサ
「触れる」の意味。
senna
【センナ】
سنا
サナー
健胃剤・下剤に用いる。
tamarinde
【タマリンド】
تمر هندي
タムル・ヒンディ
緩下剤に用いる。


天文学
アラビアの天文学はインド、ペルシア、ギリシアの知識をもとにしながら、組織だった長期的で詳細かつ正確な観測をもとに独自の発展を遂げました。星の名前や天文学用語はアラビア語起源のものが多数を占めています。


almanac
【アルマナック:暦、年鑑】
الروزنامة
アッルーズナーマ
 
astrolabe
【アストロラーベ:天文観測器械】
أسطرلاب
アストロラーブ
 
azimuth
【アジマス:方位(角)】
زاوية السمت
ザーゥヤトッ・サマト
「道」の意味。
nadir
【ネイディア;天底】
نظير
ナディール
 
zenith
【ジーナス:天頂、頂点】
ذروة
ジルワト、ズルワト
「頂上」の意味。


数学

algebra
【アルジェブラ:代数学】
الجبر
アル・ジャブル
 
algorithm
【アルゴリズム:アルゴリズム】
الخوارزمي
アル・フワーリズミー
アル・フワーリズミーという人名が語源。フワーリズムはアラブ地理学者らがつけたアラル海の名称。
average
【アヴェレッジ:平均】
عوار / عوارية
アワーリヤ / アワール
「アワール、アワーリヤ」=「海損(分担)額」。海洋貿易において出た損害を各者が分担するというシステムに由来。
sine
【サイン:正弦】
  アラビア語の جيب ジャイブ 「袋、ふくらみ、乳房」のラテン語訳
x
【エックス】
شيئ
シャイゥ
代数計算に用いるxも、もとはアラビア語の شيئ (シャイユン 「もの」の意味)から来ています。 ش  (sch)の音価に当たるスペイン語がxのため、xが使われるようになりました。
zero
【ズィロウ:ゼロ、0】
صفر
スィフル
「スィフル=ゼロ」。ゼロの概念はインドからの輸入。


 

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