キング・ファイサル国際賞科学賞受賞 1


1999年度キング・ファイサル国際賞授賞式、リヤードにて開催
−名古屋大学・野依良治博士、科学賞受賞‐



 「1999年度キング・ファイサル国際賞」の授賞式が去る3月2日午後8時30分よりリヤード市のアル・ホザマ・センターにて開催され、名古屋大学理学部教授の野依良治博士が科学賞を受賞した。1996年に岩手医科大学の藤原哲郎教授が日本人として初めて医学賞を受賞しており、野依教授が日本人二人目のキング・ファイサル国際賞受賞者となった。

 国王の代理としてスルターン第二副首相兼国防・航空大臣が授賞式に出席し、同賞五部門の受賞者8人に、賞状、賞金、金メダルを各々授与した。本授賞式には、リヤード州知事サルマーン殿下、同副知事サッターム殿下、キング・ファイサル国際賞委員会委員長ハーリド アル・ファイサル殿下(ファイサル国王の子息でアシール州知事)など多数のプリンス、政府高官が出席した。

 野依教授の受賞は、スイス連邦工科大学のディータ・ゼーバッハ教授との共同受賞で、精密な科学物質を作り出す触媒研究が、「人類に多大な貢献をもたらす」との高い評価を受け、授賞されたものである。

 受賞スピーチで野依教授は、「われわれの研究成果は医薬品開発や環境問題などの分野に貢献できると考えており、今回の受賞は大変な栄誉です」と挨拶し、会場から大きな拍手をもって祝福された。

 リヤード滞在中、野依教授は駐サウディアラビア高野日本国大使主催祝賀レセプションに出席した他、キング・ファイサル国際賞の母体であるキング・ファイサル財団(King Faisal Foundation)が用意した数々の公式スケジュールをつつがなく終了した。

 野依教授の受賞スピーチならびに教授夫妻のリヤード滞在記を以下、ご紹介する。


野依教授受賞スピーチ

 キング・ファイサル国際賞の科学賞受賞の栄誉に浴し、心より感謝申し上げます。私の業績をお認めいただき感謝いたしますが、感動のあまり適切な御礼の言葉が思い浮かびません。また、化学分野において私が長年にわたり尊敬し続けておりますディーター・ゼーバッハ教授と本科学賞を共同受賞できたことは私の名誉であります。

 私たちは、有機物質の化学合成という実用的かつ理論的にも重要な化学研究により、人類の福祉に貢献してきていることに誇りを抱いております。私たちが培ってきた知識は、石油などの天然資源や生物資源を、高付加価値のある化学物質、例えば医薬品、農化学薬品、調味料、芳香剤などに変換することができるのです。この目的のため、ゼーバッハ教授と私は、世界の化学者とともに数々の有効な化学的方法を成功裏に開発してきました。化学合成は、分子科学・技術の確固たる、論理的基盤になっていますので、人類の将来にとり不可欠なものであると私たちは確信しています。健康・食品・エネルギー・環境などに関する現存の、そして将来生じるであろう社会的かつ全世界的な問題の解決のためにも私たちの研究成果が活用されることでしょう。

 世界最大の産油国であるサウディアラビアは化学産業、化学世界にとって最も重要な国であります。日本の学界にいる私たち化学者が、サウディアラビアの化学者と協力する機会は残念ながらいままでほとんどありませんでした。近い将来に、化学者が知識と技術を結集できれば、私たち化学者は現在よりもさらに大きく、人類の生活向上に貢献することができるでしょう。

 キング・ファイサル国際賞の受賞は私のいままでの経歴のなかで最大の栄誉でありますが、この栄誉のほとんどは名古屋の研究グループをはじめとする共同研究者に帰するものです。

 終わりにあたり、日本サウディアラビア協会の強力な激励の下、私をキング・ファイサル国際賞の選考委員会に推薦していただいた日本化学会に対し心より御礼申し上げます。

 私はこの受賞の瞬間を生涯忘れることがないでしょう。

 ありがとうございました。
スルターン殿下(右)とハーリド殿下
スルターン殿下(右)とハーリド殿下


活発な人的交流が望まれる基礎科学分野
名古屋大学教授 野依良治
賞状を手にする野依教授 野依教授と共同受賞者のゼーバッハ教授
賞状を手にする野依教授 野依教授と共同受賞者のゼーバッハ教授

 この度は、図らずもキング・ファイサル国際賞受賞の栄誉に浴することができましたが、推薦団体である日本化学会ならびに日本サウディアラビア協会のご助力の賜物と感謝しております。また、私の化学研究は多くの人達との共同作業によるものであり、協力者たちと喜びを分かち合いたいと思います。

 2月末からキング・ファイサル財団の招待によりリヤードに参り、3月2日スルターン ビン アブドルアジーズ殿下より授賞され、感激を新たにいたしました。

 一週間の滞在を経て、サウディアラビア王国からは文化面でも多くのことを学ぶことができました。かねてから宗教の重要性を存じておりましたが、さらに人と人の絆を非常に大切にする国であることもわかりました。また、優れた指導者のリーダーシップのもとで多くの国家的プロジェクトが進行しており、学術や科学研究などに関しても国際水準にあり、目を見張る施設が設置されていることが特に印象的でした。今後、優れた若手研究者の生育に伴い、これら施設が正に世界的な中核的研究拠点として機能することが期待されます。この観点から、わが国もより活発な学術協力、とくに基礎科学における人的交流を通してサウディアラビア王国に貢献できるのではないかと考えています。

 申すまでもなく、石油資源の長期安定確保はわが国にとり生命線ともいうべき重要課題です。多くの日本人の方がその実現に向け、たゆみない献身的な努力をされていることを知り、頭の下がる思いがいたしました。

 キング・ファイサル財団と関係の方々には身に余る温かいおもてなしをいただきました。私もこれを機に、国際的に視野を広め、さらに学術研究に精進する所存でございます。

 皆様、どうも有り難うございました。



(※役職名等は、すべて当時のものです)
転載:「日本サウディアラビア協会報」
No.201 1999

(2007年1月26日更新)













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