大巡礼に招かれて

イヘラームを身につけた日本からの巡礼者と筆者(左端) 日本からの巡礼者
イヘラームを身につけた日本からの巡礼者と筆者(左端) 日本からの巡礼者

 数年前からサウディアラビア国王陛下の招待によるマッカ大巡礼が行われており、今年も東京にあるアラブ イスラーム学院を通じて日本ムスリム協会に人選の依頼があった。結果は、日本ムスリム協会から筆者を含む3名と、アラブ イスラーム学院に応募した13名の合わせて16名が今年のマッカ大巡礼に参加することとなった。

 出発の前日、アラブ イスラーム学院で大巡礼の方法について詳細な説明会があり、男性には巡礼着(イヘラーム)が配られた。1月28日に成田を出発、クアラルンプールからジェッダまでのフライトの間に巡礼者が禁忌の状態になる地点(ミーカート)を越えるため、それまでに機内でイヘラームに着替えた。

 ジェッダ空港には1月29日早朝に到着、入国手続き後一路車でマッカを目指した。マッカの街は巡礼が始まる間際ということもあって、すでに多くの人々が路上にあふれていた。宿舎で旅の疲れを癒し、その日の午後オムラ(小巡礼)を行うためハラムモスクに向かった。

 カアバ神殿の周囲では沢山の人がタワーフ(カアバ神殿の周囲を左回りに七周する行)を行っており、その流れに身を任せるほかはなかった。一心に祈りの言葉を口ずさむ人、小さなマニュアルを持って回る人、と人それぞれの思いで祈りながら回っている。

 このようにして七周し、礼拝をすませた後サアイ(2つの丘を3往復半する行)を行うためにサファーの丘に向かった。サアイはサファーとその450メートル先にあるマルワの丘の間を行き来しマルワで終了する重要な行である。

 タワーフとサアイを終え喉が乾ききったところで、ザムザムの水を飲むと生き返った心地がする。マルワの丘を出たところには床屋が並んでおり、髪を少々切ってもらい宿舎へ帰ってイヘラームを脱ぎひとまずオムラを終了した。

 明けてイスラーム暦12月8日にあたる1月30日に大巡礼の意思表示をして再度イヘラームを纏い、ラッバイカッラーフンマラッバイカ……(アッラーよ、私は御前に侍ります、御前に侍ります)と合唱しながら、マッカから5キロほど南東の山間のミナーに向かって出発した。

 メンバーの16名の中には体調を崩す人もいたが何とか全員そろってミナーに向かうことができた。ミナーは無数のテントが並べられた巨大なテントの街で、年一回の数日の巡礼のためにテントが準備されている。

 ミナーで一夜を明かし、イスラーム暦12月9日、ものすごい数のバスに乗り込み、ラッバイカッラーフンマラッバイカ……と何度も口ずさみながら10数キロ離れたアラファの平地へ向かう。アラファでは思い思いの場所でマッカの方向に向かい、過去の過ちを悔い神の許しを希う。

 砂の上に敷物を敷いて座りドアー(祈り)するもの、立ってドアーするもの、それぞれ一心に祈っている。私も過去の過ちに対するアッラーの許しを請い、また世界のムスリムの平安を願った。そして日没とともにアラファから一夜を明かすためにムズダリファへと向った。
アラファ ミナーのテント風景
アラファ ミナーのテント風景

 しかしながら、巡礼に来た200万人とも言われる人々がアラファから一斉に移動するため道路は大渋滞しており移動は容易ではなかった。やっとムズダリファに着いてミナーから持ってきたマットレスを砂地に敷き一枚の毛布に包まって一夜を明かす。砂漠の夜は底冷えし足は一向に温まらない。それでも夜空の星を見ながらじっとしていると少しは眠ったようだ。

 イスラーム暦12月10日はミナーにある悪魔を象徴した石柱に向かって小石を投げる日で、ムズダリファで小指大の小石を拾って用意し、ミナーに戻って投石を行う。

 またこの日は、犠牲を捧げるために羊等の家畜の屠殺を行う日でもあり、この儀式を代行する業者からクーポン券を買って子羊を捧げることにした。捧げられた家畜の肉は貧者に配られるとのこと。投石を終えて再度髪を短く切って全ての行を終了したが、何か生まれ変わったようなすっきりした気分になった。

 マッカを発つ日、別れのタワーフをしてマッカでの大巡礼の行事をすべて終了した。その後、預言者モスクのあるマディーナ滞在を経て16名全員が無事に帰国したが、今回の大巡礼では、サウディアラビアの関係者に大変お世話になった。改めてファハド国王陛下とサウディアラビア政府、関係者にお礼を申し上げる。
新井卓夫(日本ムスリム協会 副会長)


(※役職名等は、すべて当時のものです)


転載:「日本サウディアラビア協会報」
No.212 March2004

(2007年9月7日更新)













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