サウディアラビアの女性を取材して
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| 取材スタッフと筆者(中央) |
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「あなたが日本から来た記者の方ですか」。
呼び止められて振り返ってみると、そこには髪の毛をきれいにカールして、丁寧なお化粧をした小柄な女性が立っていた。ブラウスの袖にはレースときらきら光るスパンコールがあしらわれている。昨年3月にサウディアラビア政府が、ビジネスを志す女性の支援を目的として開設した「支援センター」に勤める女性だ。2003年9月末から3週間にわたるサウディアラビアでの取材旅行。
私の取材の大きなテーマの一つが「女性」だったが、彼女との出会いで、私のサウディアラビアの女性のイメージは大きく変わった。それまで欧米のメディアを通じて見聞きしていたサウディアラビアの女性の姿は、「黒いアバヤで全身を覆っている」「運転ができない」といったイメージのみ。滞在中にサウディアラビアの女性の生の声を聞いてみたいと思った。女性の取材は難しいと指摘する人もいたが、いざ情報省に取材を申し込むと担当官はとても協力的であっという間に、面会の約束をとってくれ、取材は順調に始まった。
彼女が待ち合わせに指定したのは、リヤド市内の中心部にある大型ショッピングセンター「キングダム・タワー」の中にある女性専用フロア。通称「ウィメンズ・キングダム」と言われるこのフロアには店員も含めて男性は一切、立ち入りが認められていない。店員も買い物客もアバヤを脱いで、競うように最先端のファッションで身を固めているため、とにかく華やかだ。
彼女は、物怖じしない態度で、次々と店員に声をかけて国籍や年齢などを訊ねる。驚いたことに、店員の殆どがサウディアラビア人の女性だった。ヨーロッパの一流ブランド店で働いていた18歳の女性は「高校を卒業したら家にいるのではなく、社会にでて働きたいと思った。仕事はすごく楽しい」と話してくれた。「お父さんは仕事をすることに反対しなかった?」との問いに対しては「お父さんも、お母さんも賛成している」。そして少しはにかんだように「結婚なんかしないで、ずっと働いていたい」とも。
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| サウディアラビアの女性たち |
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デパート、銀行、ブティックと私に「突撃インタビュー」を仲介した後、彼女は「サウディアラビアでは、高学歴の女性が増えたため、社会に出たい、仕事をしたいと思う人が最近急激に増えている」と説明した。一方で、厳然として制約もある。例えば女性は、男性の代理人が必要とされ、許認可権を握る省庁に直接出向いて交渉することもままならない、銀行の融資も受けにくい等など。
そうしたことが、高等教育を受けて能力もやる気もあるのに、女性が起業するのを躊躇する原因の一つとなっていると指摘する。彼女の勤める支援センターは、これまで女性が男性に頼らなければできなかった許認可などの事務を代行することで、女性の社会進出を促進しようという目的で設立されたもので、アメリカで修士号を取得した彼女は、子育てと仕事を両立させながら東奔西走している。
3時間にわたる取材の後、私は、彼女にカメラの前でのインタビューを依頼した。テレビ局の記者としては、どうしても映像に収めなければ伝えることができないのだ。
ところが、彼女の返事は「ノー」だった。過去に一度外国メディアに出たことがあるが、周囲の批判にさらされ2人の息子の学校生活にまで影響を及ぼしたというのだ。これもサウディアラビアで女性を取材する上での現実だろう。結局、3週間の滞在で11人の女性にコンタクトをとり、2人にインタビューに応じてもらったが、2人とも「日本国内での放送に限る」というのが条件だった。
今回、私が話しを聞くことができたのは限られた数で、しかも仕事をしている女性だけであったため、取材といっても彼女たちの一面を見たに過ぎない。しかし、アバヤの下に隠された彼女たちの素顔は前向きで力強く魅力的だった。今後、サウディアラビアの女性たちがどのように自らの声を発信していくのか、期待をしながら見続けたいと思う。
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税所玲子(NHK報道局 国際部記者)
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(※役職名等は、すべて当時のものです) |
転載:「日本サウディアラビア協会報」
No.212 March2004
(2007年9月21日更新)
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