サウディアラビアの地方選挙と政治的発展

リヤード市議員選挙で当選した7名と発表する地方議会選挙委員会長のプリンス・マンスール(2月12日付、アル・ジャジーラ紙)
リヤード市議員選挙で当選した7名と発表する地方議会選挙委員会長のプリンス・マンスール
(2月12日付、アル・ジャジーラ紙)
神戸大学国際文化学部助教授 中村 覚 
 サウディアラビアの地方議会選挙が成功を収めようとしている。2月から4月にかけて全13州を3つのブロックに分けて、市町村レベルに相当する178の地方自治体で、各議会の半数にあたる計592議席をめぐる選挙が実施される予定で、これまでのところ大きな混乱もなく粛々と進められている。

 すでに第一ブロック(リヤード州)と第二ブロック(東部州と南部4州)の「市町村」議会で投票が終了し、投票翌日には開票作業が終了して当選者名簿が発表された。最後の第三ブロック(西部2州、北部5州)の「市町村」では有権者登録が終了したところであり、今後、立候補者の受付と選管による認定作業の後12日間の選挙運動が行われ、4月21日に投票日を迎える予定となっている。
早朝に投票に来た市民(2月11日付、アラブ・ニューズ紙) 笑顔で投票するサウディ青年たち(2月11日付、サウディ、ガゼット紙)
早朝に投票に来た市民
(2月11日付、アラブ・ニューズ紙)
笑顔で投票するサウディ青年たち
(2月11日付、サウディ、ガゼット紙)
 今回の選挙は、投票権が21歳以上、立候補権が25歳以上に認められる男子普通選挙で、国民の自発的な意思に基づく自由選挙と秘密投票が完全に守られており、民間4団体が選挙監視を担当している。有権者登録、立候補、投票のすべてにおいて国民の自発的な意思と行動が尊重されているが、これまでの経緯から国民の政治参加への関心と期待の高まりが感じられる。

 第二ブロックまでの選挙戦では、47万名以上が有権者登録を行ったほか、計312名の議席をめぐって4500名以上が立候補するという活発な選挙戦が繰り広げられた。特にリヤード市議会選では、7議席をめぐって当初698名が立候補するという激戦となった。

 プリンス・マンスール選挙委員会統轄委員長は、有権者登録の数は初回の選挙としては満足すべき結果であるとの見解を示しているが、妥当な評価であろう。

 これまでサウディアラビアでは、国王、皇太子、閣僚などによって、古きよき伝統である国民引見が毎週開かれ、国民の要望が行政に取り入れられてきたが、近年、政府は、国民の政治参加を推進するための近代的な政治・行政制度の改革に取り組んでおり、民間部門の人材を活用しつつ、各種最高会議や国民対話会議センターの設置、省庁再編、NGOの認可などの成果を挙げてきた。

 今回の地方選挙の導入は、国民参加による新しい社会づくりを目指す政治改革の一つの課題が実現したものであるが、西欧型デモクラシーの直輸入というよりは、サウディアラビアの国家と国民に適した小さな改革を積み重ねた成果の延長上に結実したのものと言えるであろう。
投票する市民(2月11日付、アッシャルク・アルアウサト紙) 投票する市民(2月11日付、アラブ・ニューズ紙)
投票する市民
(2月11日付、アッシャルク・アルアウサト紙)
投票する市民
(2月11日付、アラブ・ニューズ紙)
 今回の地方選では選挙行政の都合で女性の参政権は認められないこととなったが、その成功は他の改革案を活気づけており、今年に入ってからサーリフ・アールシャイフ・イスラーム問題担当相、サウード外相、諮問評議会議員、女性活動家などは女性にも参政権が与えられるべきであると発言している。またスルターン国防相も、昨年、諮問評議会への選挙制度の導入が将来的にあり得ると発言している。

 サウディアラビアのイスラーム学者は、ウンマのマスラハ(福利)を重視する観点から発展や進歩を肯定的に理解する姿勢を堅持しており、サウディアラビア社会は、これまでと同様に伝統と発展、福利と安定性、対話とコンセンサスを重視しながら、国家と国民の関係に無理が生じない速度で諸改革を推進して行くであろう。




(※役職名等は、すべて当時のものです)
転載:「日本サウディアラビア協会報」
No.214 April 2005

(2008年2月1日更新)













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