サウディ発見


活気溢れるサウディアラビア考古学界


財団法人中近東文化センター 主任研究員 川床 睦夫


2005年12月5日から7日まで北部のジャウフ州の州都、サカーカで開催された第一回アドゥマト・シンポジウム『アラブ世界の都市:その発生と展開』に招待され、都市と東西交流セッションで「シナイ半島のラーヤ港とトゥール・キーラーニー港」と題する研究発表を行いました。

「アドゥマト」とは、1963年にジャウフ州知事、アミール・アブドッラフマーン アッスダイリーが設立した、有形・無形文化財の保護・保存、図書館経営等の文化事業を展開する文化財団が発行するアラブ世界の考古学的研究を目的とした学術雑誌(2000年1月創刊)のタイトルで、紀元前8世紀頃のアッシリア語文書によるジャウフ地方の呼称に因んでいます。

このシンポジウムでは、筆者以外にサウディアラビア王国内から数十名、その他のアラブ諸国から13名、ヨーロッパから6名の研究者が招聘され、考古学を中心にアラブ・イスラーム世界の歴史研究に関する30の研究発表と100名近い参会者による活発で有意義な討論が行われました。3日間にわたる熱気あふれる会議、ドゥーマト・アルジャンダルの博物館・城塞遺跡とカリフ・ウマル・モスクの見学会、主要産物であるナツメヤシとオリーブの大果樹園の中に設営されたテントでのサヨナラ・パーティーなど、思い出深い時を過ごしました。

サウディアラビア考古学界と関わりを持ち始めて既に6年目になりますが、国内考古学者の層の厚さと情熱には驚きを禁じえません。同国の考古行政は教育省考古博物館庁(近々、観光最高会議に移管される)が、教育・研究はサウード国王大学文学部考古学・博物館学科が担当しています。現在40歳台以上の人々は欧米諸国で学位を取得して、大学あるいは考古博物館庁(2005年末に考古学雑誌アトゥラール第18巻が刊行された)で研究および若手の指導に当たり、近年では、国内で優秀な論文を提出し学位を取得する者が増加しています。考古博物館庁は、毎年、優秀な学位論文の中から1編を選んで出版すると同時に、執筆者に奨励金を授与しています。

サウディアラビアの歴史的存在の意味をヨーロッパ史あるいはキリスト教文化史の一辺境として捉える欧米の立場を離れて、アラビア半島・アラブ世界の立場から自らの存在意義を問い直し、意味付けを確立しようというアンサーリー博士、ラーシド博士たちの呼びかけに国内の研究者たちは賛同し、行政機関と教育・研究機関が一体となって意気込みに溢れた活動を展開しています。

朝8時から夜遅くまで続けられた老若、国籍の隔てない真摯な討論の3日間は清々しい充足感を与えてくれました。

12月4日夕刻に開催された開会式にはジャウフ州知事アミール・ファハド殿下も出席された。壇上には、スダイリー財団理事長ザイド博士(中央)、アンサーリー博士(実行委員長、元サウード大学考古博物館学科長・教授、元諮問議会議員、左)、アブドッラー博士(元イェメン共和国考古博物館庁長官、右)
12月4日夕刻に開催された開会式にはジャウフ州知事アミール・ファハド殿下も出席された。壇上には、スダイリー財団理事長ザイド博士(中央)、アンサーリー博士(実行委員長、元サウード大学考古博物館学科長・教授、元諮問議会議員、左)、アブドッラー博士(元イェメン共和国考古博物館庁長官、右)
 

転載:「日本サウディアラビア協会報」
No.216 March2006













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