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現在、多くの人々が民主主義は人類が手にした最も優れた政治思想であると信じている。かつてヨーロッパに於て、専制君主の支配下で搾取され虐げられてきた数多くの一般民衆が民主主義を勝ち得たとき、人々は希望と喜びに満ちあふれていたに違いない。ヨーロッパ発のこの民主主義は、日本をはじめ世界各地でとり入れられ、今日に至っている。しかしながら、民主主義には致命的な欠陥がある。民主主義は往々にして腐敗し、衆愚政治を生み出すのである。アフガンやイラクに攻め入ったアメリカの民主主義は、まさに衆愚政治の典型ではないだろうか。民主主義が生み出した怪物である腐敗した衆愚政治が、経済力と武力を背景に、我が物顔で世界をのし歩く光景は余りにおぞましく、見るに耐えない。
一方、5〜6世紀、イスラーム以前のジャーヒリーヤと言われる時代のアラビア半島社会では、男子を尊び女児が生まれると殺してしまう風習があったという。そんな中で、唯一神の前に男女平等を説くイスラームは、この風習を激しく批判し、禁じたという。極端な男尊女卑の世界に住む女性達にとってイスラームは光であったに違いない。やがてイスラームは絢爛豪華な文化を花開かせ、その多くを吸収して後のヨーロッパ文化は発展していったのだという。1400年の歴史の中で、イスラーム世界も又変容していった。
ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラーム教徒が信ずるように、唯一神がこの私たちの住む世界を創造したのだとするならば、彼らの信ずる神は同じ神であるに違いない。私の知る限りに於て、イスラーム教徒はそう考えている。そうであるならば、唯一神は、ある人々にはユダヤの教えを、ある人々にはキリストの教えを、ある人々にはイスラームの教えを、それぞれ啓示したのだということになる。
キリスト教では、政治は人間の手に委ねられているという。現代に於て、欧米キリスト教世界の人々が手にしたものは、“政教分離”の原則と民主主義とそれに基づく法である。そしてそれは、欧米キリスト教世界に留まらず世界の多くの国々でとり入れられている。
一方、イスラーム世界に於ては、7世紀に、唯一神が法(シャリーア)を啓示したのである。もしも唯一神を信ずるのならば、イスラーム教徒はシャリ−アを捨ててはいけないし、それを捨てることはイスラームを捨てることになるのである。“政教分離”は欧米を中心とする世界の原則であって、イスラーム世界に於ては“政教一致”が原則である。
“国際法”と人は言う。しかしながら、現在、世界の多くの国々にみられるような欧米キリスト教世界の理念に基づいた法ならば、シャリ−アを無視して作られた法ならば、それは真の国際法ではない。シャリ−アは唯一神が人間に与えた法である。唯一神を信ずる者ならば、その法をあだやおろそかには出来ないはずである。ユダヤ教徒やキリスト教徒は言うかもしれない。「イスラームの神は我々の神とは違う」と。唯一神は唯一である。そう主張することは、イスラームを否定することである。十数億のイスラーム教徒が信ずる神をうその神であると主張する根拠が一体どこにあるのか、そう考える人たちは、はっきりと示さなければならない。それを証明することなしに、そのように主張することは、余りにも傲慢である。
民主主義とそれに基づく法、そして“政教分離”の原則を、“国際社会”はイスラーム世界に押しつけてはいけない。それは“国際社会”という旗印のもとの、キリスト教世界のイスラーム世界への侵略である。“国際社会”はそのことに気づかねばならない。
多くの人は言うかもしれない。「ばかげている!宗教と政治は別なのだ。政教分離こそが人類に共通の普遍の原則なのだ」と。「宗教と政治が一体となったところに、人類の数々の悲劇は起きてきたのだ」と。けれども、そう主張する人たちは答えねばならない。「あなたはイスラームを否定するのか?」これは“国際社会”に対するイスラーム世界からの問いかけである。唯一神への信仰を抜きにして、イスラーム世界は存在することが出来ない。イスラーム世界とは、本来唯一神の支配する世界である。即ちこれは、神を忘れた現代社会に生きる私たちに対する、イスラーム世界を通した唯一神からの問いかけではないか。
イスラーム世界に暮らす人々に与えられた唯一神からのメッセージは、1400年の時を経て、今に生きる人々に問いかける為に用意されたものだったのだろうか?
天地創造の神が人間の歴史に残した足跡は余りにも偉大である。唯一神抜きに人類の歴史は語れるのだろうか?そして今、世界を舞台に唯一神をめぐる戦いが繰り広げられており、地球上に住む大多数の人々はその争いに無関係ではいられない。天地創造の唯一神は本当に存在するのか?あるいは人間がつくりだした妄想なのか?この問いに答えることなくして、もはや政治を語ることは出来ないのではないか。そして、その答えは、個々の人々の心の中にある。
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